『ブタのいた教室』

・ずいぶんと難しい話題を真ん中にもってきたものだ。邦画の製作状況だとこういう内容は避けられる傾向が強いだろうが、それにゴーサイン出したという点はなかなか。

・取り上げている題材が題材なだけに娯楽作品というわけにはいかないし、だからといって社会派の問題作という訳でもないし。

・作りが面白いからなかなか興味深く観ることは出来たが、この映画はどこに向いているのか、だれに向いているのかは分からない。児童教育の現場か、子供たちか、親か、この映画を観る多くの大人へか、煮え切らぬ、はっきりしない、すっきりしない。

・テーマはなんだ、訴えようとしているものは、人はなんだ、視点はどこにある。。。と、いわゆる映画論的なことを考えるとどれもこれもまったく不可解であり、結局この作品は子供たちに育てた動物を食うか食わぬか、食べる為に生きる為に人間は動物を殺すことが正しいか正しくないか、嫌か嫌でないかという難問を投げ掛けただけで、あとはほったらかしにしている感じがする。

・映画すべてに結果や結論が必要だというわけではないが、これだけの難問を提起しておきながらそこになんら明確な意志をしめさないのでは、煮え切らぬ、すっきりしない、釈然としない。腑に落ちない。

・なにか仕組まれたものを子供の表情から感じてしまう。キラッとした子供が誰しも持っているような輝きや煌めきが見えない。子供たちの討論のシーンは台本もなく、実際に生の討論をさせてそれを撮影したということだが、それを知るまでは演技をあれこれ仕込んでいるからこんな輝きのない子供の表情になっているんじゃないかとさえ思った。

・台本もなく、実際に子供たちに自由に討論させたということだが、それが却って子供たちにカメラを意識させ、自分がどう映るか、自分の話がどう捉えられるか、自分がどう評価されるかといった意識を生み、却って本来ある子供の輝きが、つたない演技を演じることで覆われてしまったのではないか?

・なんにしても、なんだか無責任というか言うだけ言ってほったらかしというか、そういう映画に思えた。