『60歳のラブレター』

・ベタだ。話も脚本も演出も演技もなにもかもがベタベタだ。なにか話や演出に工夫がされているという感じが全くしない。想像どうり、今までTVドラマ、映画、本、マンガなどあちこちで観たり読んだりした通り、そのままの運び、展開。なにかちがった角度から見るとか、もっと深堀して描くだとかそういう思いはどこにもなかったのかと思ってしまう。

・ラストでまあまあいい具合に話をまとめて、決まりごとのようにちょっと感動的にして話を盛り上げてお涙を誘って・・・それでも悪くはないが、涙腺のゆるい人なら涙をこぼし、ジーンとなるだろうが、だからイイ映画だ感動しただとかは短絡的過ぎる。

・定年退職離婚、別れた妻の睦言。結婚しないで過ごしてきた翻訳家の女性と子持ちの医者の恋愛、その間に立ったこどもの悩み? ああ、もう全てが市場で並べられ、売られているものを買ってきて並べたかのような中味。それを撮影したからってそこに映画としてのなにかがあるとは言えない。

・それこそこれならTVドラマの2時間スペシャルでいい、いやそれにも及ばないか。

・『幸福の黄色いハンカチ』に手を加えた亜製品のようでもあるし。『幸福の黄色いハンカチ』は役者の演技力と適度なおちゃらけと笑いで立派な作品だったが、これはもう極めて表面的。浅い、人間の描写がまったく深堀されておらず、一般的に簡単に想像するいかにも典型的正確。

中村雅俊もまるで演技に味も深みも無い。

・まあ、奥さん方が観て、ウンウンと納得したり、憧れたり、溜め息をついたりする材料としては最適な作品かもしれないが。