『獄門島』(1977)

横溝正史作品の中では最高傑作、といわれている?

・この作品や配役が凄いな。話題作り、単なる役者での引きを考えたような配役ではなく、登場人物の一人々が全て演技力のある役者でずらりと揃えられている。

・演技力もなにもないアイドル、人気女優、男優を使って下手くそな演技をさせているような映画とはまるで違う。役者というもの、演技と言うものを鍛練し、突き詰め、最上級の演技をしたいと努力、精進している役者魂を持った本物の役者だけをずらりと集めている。だからこれだけ映像の濃度が高くなっているんだろう。(浅野ゆう子だけはちょっとへんちくりんだが)

・演技というもの、役を演じること、人間を演じること、その心情を演じることに身を削るほど精根込めている男優、女優が揃っているから、映画にその役者達のオーラが充満している。それを市川崑がぎっしりと映像に凝縮し、漏れることなく密封している。

・映像、脚本、演出、演技にスキが全くない。いい加減な手抜きなどどこにもない。隅々まで意識が張り巡らされている、そんな感じか。

・こういうのは今の映画にはないな、いや極めて少ない。こんなもんでいいだろう、予算がないしこの辺でいいだろう。まあちょっとなんだがなんとかなるだろう。そういってカットを片づけるような部分が無い。徹底的に納得がいくまで鍛練した映像のみを繋いでいる。そんな感じだろうか。

・黒澤とか小津とか昔はこういう映画作りをしていた、出来た。そしてこの映画における市川崑も。ちゃらちゃらしたところが全然ない。とにかく納得できないものは使わない、納得いくものだけで映画を作り上げる。そんな意気込みが感じる。

・脚本、話もじわっとした味があるが、やはりこの映画はずらりと揃った役者の素晴らしい演技に陶酔する作品かもしれないなぁ。

大原麗子・・・うーん、凄い。司葉子・・・これも凄い。 太地喜和子・・・溜め息もの。加藤武の等々力警部はもうこれしかないし。 東野英治郎・・・文句無し。佐分利信・・・凄い。ただそこにいるだけで演技をしている、奥深いものを感じさせる。

司葉子大原麗子の絡みの場面も物凄い。ここはもう二人の表情と演技に目が釘付けになる。

・そして・・・金田一耕助はやはり石坂浩二が一番だ。

・なんとはなしに「砂の器」(1974)を彷彿させるような感じもある映画でもある。この頃、1970年代の映画作りというものは、2000年代の今とはその精神的な部分でまるで違うものがあるという気がするなぁ。

・いやはや、これは邦画の名作の一つというのが本当に正しい。