『るろうに剣心』(2012)

脚本もしっかりしている、破綻もまるでなし、話の展開もリズムにのっていて淀むところもない、なんでこんなバカな場面をいれているとムカつくところもない。充分に面白い。いうなれば総合点が非常に高い。カット、アングル、アップ、とくと研究され研鑽され尽くしているいるハリウッドの手法、様式がしっかり咀嚼され映画の血肉を担っている。それが少しばかり鼻につくと言えなくもないが、この程度がハリウッドで基準、スタンダードといわれるかもしれない。

しっかりとした技術、それをまとめる力、全体を構築し俯瞰するする視点、そして脚本のまっとうさ。それが結実すればこれだけの映画が出来るというお手本か。

敢えて難癖をつけるとしたら余りにハリウッド的すぎるというところか?ハッと驚くような、息を飲むようなそういった今まで観たことのないような映像、シーンというもは無い。いうなれば標準中の標準、それより少し上という中身と映像である。ここになにかワンシーンでも極めつけの驚きや、うわっといいたくなるような今までみたことのないような驚きの映像や演出があれば、傑作になっていたか?


これならば日本映画のレベルが上がったといって差し支えない。大したもんだ。

アクションシーン、立ち回りがいい。CGIに頼りきっていないところがいい、CGIにおんぶにだっこでありえないような画角や動きで今まで観たことのないような場面を作ろうなんてしたものは大概失敗している。CGIならなんでもどんなことでも出来るからと映像を作ったはいいが、現実的にありえない動きや角度ばかりが目立ち観る側からすると嘘っぱちの映像がミエミエであるから白ける。
対してこの映画はしっかりと格闘も肉弾戦も行っているし、CGIで誤魔化したりしていない。そこが非常に好感が持てるし、絵に嘘ではない迫力がある。

武井咲はいい女優になるな。アイドルがちゃらちゃら映画に出演して棒セリフ、棒立ち、のっぺら表情で声の大小だけで演技をしたつもりになっているのとは段違いで、役者らしい落ち着きや雰囲気が顔や体から出てきている。これは驚き。もちろん顔は美形だが、それだけではなく女優として、演技として様になっていて美しい女優になっている。

さすがの蒼井優でも武井咲の美しさとこの雰囲気では主役を食うことはならずといった所。

北村龍平が「あずみ」でCGIだらけのチャンバラを撮りハリウッド進出なんてやっていたのは一昔前だが、この映画を見ると歴然とした映画の差がある。

走って壁を蹴って宙返りってアクション、場面はもういいかげん使われすぎなんだからヤメるべきだろう。