『ブルーサンダー』(1983)

オスプレイの配備が大問題になっている今、この映画を見ると言うのも一考かもしれないな。

・映画のなかではエンジンを切ってオートローテーションで不時着する場面も描かれている。

ベトナム戦争にフラッシュバックさせている映像。80年代の映画には、アメリカ政府に、その行った行為に対する告発、批難がたくさんあった。この映画も根本にはそういうものがある。

・ウィスパー・モードで連邦ビルに近づき、内部で話している陰謀を聞き取る場面が好きだな。サーッとカーテンを開けたとき、窓の外にまさかブルーサンダーがいるなんて思ってもみなかった陸軍大佐コクランの驚きの顔、この場面は実に話が巧いし、痛快だ!脚本の巧さ見事さ、話の作り方、演出の巧みさ、本当に面白いし映画らしい上手さだ。

・ヘリコプター同士のエアチェイスも迫力満点で圧巻。CGIなんて無かった時代に生の実写でこれだけのものを撮れていたんだから、やはり凄い。

・LA上空で撃墜されたF16はどこへ墜落した?なんて突っ込み所もなくはないが、それでも一度観出すとやめられなくなる面白さ。

・昔の映画は本当に脚本が巧かったし、作りが見事だなぁと改めて思ってしまう。

・何度か観ているけれど、この映画、やっぱり好きだね!

・このニュースキャスターはよく見る顔だけど、なんて名前だろう。こういう場面であちこちに出てる気がする。


・監督のジョン・バダムは1970年代後半から80年代にかけてなかなかヒット作も撮っていたし、マニアックだけど名作と言われる映画を撮っていたんだな。「ウォーゲーム」にしろ「ショートサーキット」にしろ小粒ではあるけど皮肉と風刺の効いた秀作を連発している。その後はちょっと静かになってしまっているけれど。

サタデー・ナイト・フィーバー Saturday Night Fever (1977)
ドラキュラ          Dracula (1979)
ウォー・ゲーム        WarGames (1983)
ブルーサンダー        Blue Thunder (1983)
ショート・サーキット     Short Circuit (1986)
張り込み           Stakeout (1987)

☆この映画は国が武装ヘリを使った陰謀を企んでいることが漏れ、そういった国家の陰謀、暴走する政府、軍へのに対する告発、糾弾といった内容になっている。まさしくトニー・スコットの反権力、反体制の考えが映画で表現され、映画で伝えようとしている作品なのだ・・・・しかし、2012年8月、今劇場やTVでさんざん流されている9月公開予定の「バイオハザードV」の予告編映像では、今さんざん問題になっているオスプレイ・タイプの軍用機がさんざんに映し出されている。ミラの後ろで何機ものオスプレイがバンバンに飛び交って、あたかも《大活躍するカッコいい軍用機》というイメージをばらまき、洗脳しようとしてるかのようだ。「バイオハザードV」の監督やプロデューサーって、米軍やオスプレイ水深の議員から相当金もらって、米軍のポチになってこんな映像わざとらしく作ってるんじゃないのか? バイオハザードのファン、ゲームのファンなどガキンチョを映像で洗脳しようとしてるんじゃないか? そんな風に思うのだけれどね。あからさま過ぎるよね、この予告編・・・肌寒い、これを見てゲームばっかりやってるような子供が「オスプレイってかっこいいじゃ〜ん。早く日本に来ないかなぁ、見てみたい、乗ってみたい、写真撮りたい」なんて言い出しかねない。おぞましい悪魔はひっそり忍びより、いつの間にか人の心に取り憑く。

・映画が国家や政治の抑圧と暴走に対する批判、糾弾、不正告知の手段とされていたのは80年代位までのこと、その後は暴走した資本主義と自由市場主義の名の元に金を稼ぐことが正義になり、自由の大義は押し込められている。マイケル・ムーアアメリ愛国者法で政府や企業に対する批判という自由な表現を押さえ付けられている。それに反して企業は映画を使って世論操作や思想操作を謀ろうとしている。

・1983年の「ブルーサンダー」と2012年の「バイオハザードV」の二つを並べたら、時代の流れと、増幅する政治と企業のコーポラティズムの恐ろしさが垣間見えている。