「遊星からの物体X ファースト・コンタクト」(2011)

・まるで期待していなかったが、時間も短いし、さらりと見てフフフンとそれなりに楽しめたが、気持ち悪さもだいぶあり、SFというよりスプラッター・ホラーというような感じ。

・得体の知れないエイリアンを発見して、生体反応も確認せず放置するとか、切り刻むときに博士なんていう連中がだあれもマスクもせず、手袋以外はほとんど素でエイリアンにナイフをいれるとか・・・相変わらず間抜けな演出はいっぱいだが、おちゃらけスプラッターSF映画ととらえればこれでもいいか?

・名作である前作の前日談なんてこと言わないで、単純に一本の気持ち悪さ満載SF映画として作っていればいいものを、スタジオ役員や株主の突き上げが怖くて、やっぱり過去の名作のネームバリューだけはお借りしましょうということで作られたような映画。だから芯はなにもなし。出来上がるまでもなんども製作延期になったり紆余曲折したみたいだが、もうこういう取って付けたようなシリーズモノ、名作の前日談とか続編とか新しい展開とかはハリウッドのお馬鹿連中もいい加減やめたらと思う。でもやめられないんだろうな、それほどネタとアイディアは枯渇してるということだ。

・と、否定的なことを書いたが、一本の映画としてみればそこそこ楽しめる。金は掛かってるけどB級のやすっぽさプンプンのサスペンス、ホラーとしてもまあそこそこ。それもこれも前作のしっかりとした設定がどだいになっているからであろうが、前作を知らない、見ていない人なら「うん、言われるほど酷くないんじゃない、キモいけど面白かったよ、1時間45分それなりに楽しめた」というであろう。

・中身としては『 THE THING 遊星からの物体X 』の焼き直しというよりも『エイリアン1』の焼き直しという感じが強い。頭をひっくり返して四足で歩くエイリアンとか、腹を突き破って出てくるシーンとか、これって話は『THE THING』だけど映像は『エイリアン1』でしょう。ケイトの役はまさにリプリーのシガニー・ウィーパーだし『エイリアン』でリプリーがようやく逃げ出した宇宙船で後ろにエイリアンがいるっていうのも『THE THING』じゃなくて『エイリアン1』のシーンそのまんまだし。(これはオマージュとして受けとっていいだろう)

・ということで『 THE THING 遊星からの物体X 』の前日談、リメイクというわけで撮られた映画なのに、中身はエイリアン1の混ぜちゃってるわけで、だからこういう中途な映画になるんだなぁという典型。いや、エイリアン1を真似たからなんとか見れる映画になったのと言うべきかもしれないか?

・ケイト役で美形の紅一点(もう一人女優はいるが美形としては一人)メアリー・エリザベス・ウィンステッドがなかなか。目が大きくてはっきりした顔立ちで、こういう女性は日本でも海外でもそこそこ受けるか。しかしこの人、全然しらなかったけどホラー・クイーンなんて言われてたのね。なるほど、ホラー映画に出てればちょっとお馬鹿っぽさも滲んでぴったりだったのかも。でもこの作品の中では一人だけ美形でキラリとしてた。こういうのを一人だけ入れるというのもキャスティングの常套手段だが。

・前作はもろ男臭い男男というキャスティングと中身だったし。たぶんプロデューサーか誰かしらが「「THE THING」のシリーズものを作っても受けない。あれは男だらけのキャスティングで華がない。観客動員望めない。エイリアンのリプリーのような強い女性を話に付け加えればもっと観客受けするはずだ。宣伝のネタにもなる。客を惹きつけれる!そうだ「THE THING」の脚本にリプリーに相当する女性を入れるんだ!」とかなんとかやったのだろう。そういう臭いがプンプンする。

・まあおかげでこの女優を知ったわけでもあるが、願わくばそういうホラー映画の客寄せ役じゃなくてなにか真面目な作品でこのメアリー・エリザベス・ウィンステッドの演技を見てみたいとものだ。

・それにしても最近でてくる続編だとか前日談というのはどれもこれもどうしょうもない。「猿の惑星:創世記ジェネシス)」も猿のCGI以外はなんとも薄い話だったし。(ところでこれの更なる続編って作られるんだろうか? 出来ても当たることはないだろうな)。「プロメテウス」もエイリアンの前日談と宣伝しておいて、どうしょうもないないようだったし。ターミネーター・シリーズはなんとか持ち直しそうだが、3以降は正直酷い脚本と設定だし。

・ハリウッドはまわりと同じことをやらないと突かれた時言い訳できない、失敗しても「ほかもやってるから」と言い訳できるように周りと同じことをやるというどうしょうもない慣習が蔓延してしみこんでしまっているから、しばらくはこういうシリーズものの前日談だとか、少し話を横に逸らしたやつだとかが続くのだろう。