『女帝 エンペラー』(2006)

原題: THE BANQUET/夜宴

・チャン・ツィー・イーは美しい、衣装も美しい、美術も美しい、演舞も美しい、この美術スタッフは相当以上の金と労力をかけている。それが一目で分かるのだが・・・・

・カメラもフレームもライティングも、光の捕まえ方も美しい、その質は高い・・・それも分かるのだが・・・・

・チャン・ツィー・イーと映画美術と演舞の美しさを観るような映画。あたかも機械的に模倣的に作られた映像、絵の美しさが目を引くが、その根本にあるべきである話の奥行き、深さがない。

・要するに人気のある、美しいチャン・ツィー・イーを使ったプロモーションビデオのようなもの。チャン・ツィー・イーの表情の変化、そこから作る感情表現の奥深さ、その練り上げられたような見事さ、そういうものを見て、セットの豪華さを見て、それだけでいいだろう。

・チャン・ツィー・イーを全面に押し出し、派手に使って、派手な映像にして、そうすれば観客は寄せられるだろうという考えだけで作られたような映画。きっとプロデューサーや監督は話の内容で観客を感動させようだとか、心を震わせようだとかとは考えていなかったのではないか。

・要するに映画に向かってない映画。ミュージック・ビデオかプロモーション・ビデオの感覚であり事物であり、そこに映画としてのストーリーは横たわっていない。

・それにしてもチャン・ツィー・イーは最近はめっきり映画になどでなくなったし、一時期あれこれ言動を批判されたりしていたこともあったが、すっかりハリウッド・セレブ的になり、大金持ちと結婚して、もう女優をする気持ちもないということか。「初恋のきた道」で物凄い逸材が出てきたと思ったが、この娘はもともと演技を極めようだとか、女優として生きて行こうだとかそういう気持ちは薄かったのだろう。それでもあまたにいる女優などより格段に上の演技力を見せつけていたのだから、これは才能と言わざるを得まい。またひょんなことから女優に復活するかもしれないが、しばらくはセレブ妻という立場で映画や演技というところからは離れて暮らすのだろう。