『サヨナライツカ』

●ビアホールのような場所で会社の仲間達とジョッキを傾ける主人公、一人が「これから物凄い美人がやってくる」と言う。男達は期待して待つ。そこに派手な衣装で現れた女(中山美穂)、男達はざわめき色めき立つのだが・・・さっそうと現れる美女という設定の中山美穂が、まるで美しくないのだ。皴の走った顔、ケバイ衣装、ケバイ化粧、それは男が色めき立つほど期待する女の姿ではなく、歳をとって、老けてしまったオバハンの姿なのだ。
この中山美穂の姿をみた瞬間に「この映画はもうだめだろう」と予感した。
バンコク・オリエンタルホテルの美しさ、王様の宮廷のような豪華さ、気品の高さは映像として目を楽しませてくれる。しかし、その中にいる中山美穂に美しさ、豪華さ、気品の高さは無い。まるでという程、無い。
● この映画の重要な役、ヒロインである中山美穂が全く冴えていないため、この映画は非常に観るに耐えない作品になってしまった。これは明らかなキャスティングのミスだ。
● 美しく情熱的な美女の役を、目尻や頬に皴が走り、色艶も華やかさも失せた女優が演じたのでは全てが台なしになる。しかも、その女優が派手な衣装を着て、ケバい化粧をすることでより一層その気持ち悪さに拍車がかかった。肌も露な衣装に身を包み、アイラインを黒で塗った中山の姿、顔は、加齢臭を発しながらツンツンと鼻を立て、威張りちらして歩いている気持ちのわるいオバハンそのものなのだ。着飾れば着飾るほど、化粧をすればするほど、中山は醜くなっていった。可憐さ可愛らしさなどは片鱗も感じられなかった。
● その中山美穂が演じるベッドシーンがさらに酷い。西島との官能的、濃厚な情事を映し出そうとしたのだろうが、中山にはエロスが全くない、色気も、欲情も下半身の性欲すらも、中山からは感じられない。これほどまでに性欲を刺激されないベッドシーンというのもかつて無い。
● かつてのアイドル中山美穂激しいベッドシーンをみせる、というのがこの映画の宣伝キーワードでもあったのだろうが、そのベッドシーンはなんら興奮も欲情もしない気持ち悪いオバサンのセックスシーンでしかなかった。
● もし石田ゆり子が中山の演じる女性を演じていたら、この作品はもっと良いものになっていたかもしれない。女の内面を滲み出させる演技力、醸し出す雰囲気、女優として石田は中山の数段上の演技力を持っているからだ。正直なところ十数年ぶりにひょいとスクリーンに戻ってきた中山の演技は、役の年齢を感じさせるような深みのあるものではなかった。言ってみれば演技も新人レベルになって戻ってきたのだ。
● 何か中山の悪口ばかりを書いているようになっているが、作品の華であるヒロインが、こんなにも醜く、おぞましいオバサンでは話もなにもあったものではない。
中山美穂は本当にエグイおばはんになってしまっていた。『ラブレター』のときの美しさはどこにも無い。デビュー当初どこかの女番長のような品の無さだったミポリンが、アイドルとして売れるにしたがって美しく変わっていった。十数年という歳を重ねて再びスクリーンの前に現れた中山は、まるでデビュー当時の卑下た雰囲気が復活した顔つきになっていた。元々の地が表に出てきたというべきだろうか? ときどき垣間見る中山の目つきや表情には、あのデビュー当時のある種の下品さが再び浮かび上がっている。
良くない歳のとりかたをしていると思わざるを得ない。
● 『失楽園』の黒木瞳のような歳など気にしないような美しさ、そしてエロスがあるならばいいのだが、中山にそれはなかった。ましてや演技もお世辞にも上手いとはいえず、結局、中山のマイナスイメージがこの映画全体のイメージをひっぱってしまった。
● 映像やセットはなかなか美しいのだが、それはそういう場所に行けば撮れる、ちょっと気の利いた美しいシーンは小手先の工夫でもなんとかなる。
● ストーリーは凡庸で、しかも強引な引き回しが多い。欲望につられた情愛が25年後に純愛に変わっているなど、その心情の変化はまるで描かれていない。最初と最後だけ観れば途中のだらだらした話は全部いらないと思う程だ。
石田ゆり子の存在感と演技がなかったら、話に多少なりともの深みが出ることもなかっただろう。中山はセックスをして捨てられて後悔する愚かな女としてしか見えず、くだらないバカな女性を描いただけの映画になっていただろう
● 原作者の辻仁成が自分の作品の映画化にあたって、妻である中山美穂をヒロインにするよう強烈に推したのか? それとも話題性を狙ってプロデューサーやキャスティング担当が原作者の妻である中山を引き出したのか? それはわからないが、一つだけ言えることは、中山美穂はミスキャスティングだったということだ。もうすこし色艶、華やかさのある女優をヒロインにしていたら、もうすこしはマトモな作品になっていただろう。
● あまりにエグく老けた中山美穂のオバハン姿をみてしまったため『ラブレター』の美しい藤井樹のイメージが完全に崩壊してしまった。
● 後悔しきり.......。

「サヨナライツカHP」:http://sayo-itsu.com/

中山美穂インタビュー:http://pia-eigaseikatsu.jp/news/150939/38876/

http://eonet.jp/cinema/interview/index_100205_2.html

イ・ジュハン インタビュー:http://forest.kinokuniya.co.jp/interview/174/