『ミッシング』(1982)
●1973年9月11日にチリの首都サンティアゴで起こった軍事クーデターとその中で行方不明になった息子を探す父親の実話。
●社会主義政権の樹立を快く思わなかったアメリカ政府とCIAがチリ軍部を支援し軍事クーデターを起こしたという限りなく黒い疑惑。
●権力、政治、国家に対する告発、非難。
●父と子の気持ちのすれ違いを悔いながらも我が子の消息を探すジャック・レモンの名演はゆるぎなし。
●軍部が制圧し支配するサンチャゴ市内の様子が映画に思えない緊迫感。よくこの映像を撮ったものだ。無造作に街路に転がる死体など、まるで実映像のごときだ。
●軍部がクーデターを起こした都市のようす、そこに取り残された外国人のようす、簡単に殺されて行く市民の様子などがかなり現実感、真実感に満ちている。
●1970年代のアメリカ、ニクソン、キッシンジャーはベトナム戦争も含め、世界のあちこちでこういった陰謀を行っていたという事実。
●『Z』『戒厳令の夜』コスタ・ガブラス監督、一人の男性が行方不明になった実話をベースにしながら、その背景に大きく黒く横たわる国家、アメリカ政府の暗部、闇、悪を浮かび上がらせている。
●監督の動じることのないアメリカ告発の姿勢は鋼のように強靱。
●音楽:ヴァンゲリス