『インサイダー』(1999)

監督:マイケル・マン 
●硬派なマイケル・マン監督の作の強烈さは今一つ。エンターテイメント的な方向に作りを寄せ過ぎている感がする。

●もっとビリビリとした火傷をしそうな熱さや激しさが伝わってくる映画をマイケル・マンには期待していたのでその点では不満。

アル・パチーノの火花が飛び出すような熱演と、弱々しいながらも挫けず抵抗するラッセル・クロウの演技が互いに相殺し合って、映画自体の熱までをも少し冷ましてしまっているかもしれない。

●巨大企業を相手にした訴訟となれば、もっともっと薄汚くおぞましい裏の世界、法律の悪用がありそうだ。

●タバコ会社7人のCEO(The Seven Dwarfs:7人の小人)の証言シーンは目を見張るシーン。
・1994年大手7社のタバコ会社のCEOが公聴会で「ニコチンに中毒性はない」証言。2年後ジェフリー・ワイガンド博士の告発で、この証言が真っ赤な嘘であったことが判明。しかし偽証罪に問われることもなく、何百万ドルもの高給をもらい続ける。

●結局は暴走した資本主義の国で巨大企業はその政治的影響力と金の力でありとあらゆることを思うがまま、自分たちの私欲、私財を膨らませるためにやってきた。そしてそれを告発されたとしても、大罪として罪を償うわけでもなく、それなりの大して影響力のない懲罰を受けただけでのうのうと生きながらえる。

●正義と道徳の心に目覚め、悪行を告発した勇気、英断よりも、これだけ頑張っても巨大企業には針のひと刺し程度の痛みしか与えられないのかと言う虚しさが残る。そういった点では「エリン・ブロコビッチ」の方が観た後の気持ち良さは残る。希望も残る。

●既に判決が確定している実話とはいえ、たばこ会社の実名、商品名までもろに出しているのはある意味驚き。日本なら似たような名前を使って直接名前を出す事をやんわりと避ける。観る側には分かるとしてもだ。

●最初からヒズボラ、アラブ、イスラム原理主義、テロ、アメリカ大使館爆破未遂といった言葉が飛び交う。2001年の同時多発テロのほんの少し前に作られた映画の中でこんな言葉が飛び交っているのを見ると、テロの危険性は相当に高まっていたのだろう。

アメリカたばこ訴訟の裏側》
http://www.tanakanews.com/991006tabacco.htm
《RUNAWAY JURYとタバコ訴訟》
http://www.max.hi-ho.ne.jp/tmwaki/JG/tobacco.html

http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Cinema/2268/a_studio/aa_mann6.html