●2010年を振り返って、心に残った、感動した映画。(今年はまるで観ていないのだが)
《洋画》【インビクタス/負けざる者たち】
・これはマイ・ベスト10に新たに加えられる作品。いや、ベスト5か。
《邦画》【告白】
・映像、ストーリー、テクニック・・・初見でラストの衝撃には身震い。
●結局のところ2010年は映画としてはかなり不作な年だったか。”話題作”はあきらかに”話題作りをした策”であった。邦画はあまりに商業主義がベタベタと張り付いたような作品ばかりで、観に行こうと言う気持ちになるものがまるでなかった。洋画にしても似たような状況。何年か先にも名作だと言われるような作品が今年はいったいいくつあっただろう? 片手にも余るのではないか?
●2009年末公開の3D映画「アバター」の大ヒット。確かにこれは多くの人が劇場に足を運び、ナンバーワンの大ヒットになったのだが、興行収入世界一というのは3D作品ということで鑑賞料金を2000円前後と通常よりも高くし、しかもサービス料金を適用しなかったことによる部分が大きい。
●3D元年と業界は話題作りに奔走。TVも3D対応型が大々的な宣伝で売り出されたが、まるで鳴かず飛ばず。最初からごくごく普通の人も、映画ファンも、音響・映像のマニアも「家庭のTVでは3Dは流行らないだろう。家でメガネをかけてTVなんか見ない」という声はそこら中から聞こえていた。家電メーカー、関連企業はそんな声にまるで耳を貸さず「いや、今年こそが3D元年だ、3Dは絶対にヒットする」と豪語していたが、結果は火を見るより明らか。「ソフトが揃わないからだ」などと言い訳をいっているが、ソフトが増えても(増えないと思うが)この状況が急激に変わることはあるまい。メーカー、映画会社、広告代理店、あれやこれやが金儲けのために散々メディアを利用し、PRし、需要を煽ったが、そういうあざとい戦略は全て失敗した。今の時代、もう消費者は企業の戦略や宣伝に騙されるほど単純ではない。3Dの失敗は旧態依然とした企業が売り上げ向上の為に仕組んだ策が消費者に見抜かれ、消費者はもうそんな煽りに躍らされるほどバカではないのだと言うことを証明したようなものだ。企業、メーカーが需要予測やマーケティンに失敗したのではない、消費者を騙そうとして失敗し騙せなかったということなのだ。
●パッケージメディアもDVDの売り上げは更に下降。ブルーレイは依然としてブレイクする気配はない。というかもうブルーレイがブレイクすることはないだろう。97年頃から始まったDVDソフトの怒濤のような売り上げの躍進が終わり、下降曲線を辿り始めたのは、もうユーザーの映像ソフトを購入しようという動機が消沈しているということの現れでしかない。DVDのお祭り騒ぎが終わり、ユーザーはもう映像ソフトにこぞって飛びつくような気持ちがなくなってしまっているのだ。
●余りにもブルーレイ・ソフトが売れない為にソフトメーカーはDVDとブルーレイの抱き合わせ販売までするようになった。こんな状況になるとは夢にも思っていなかったが、新作映画がDVD&BDのセットで販売され、しかも価格はDVD単体とほぼ同じ。それでも売れないので数ヶ月後には50%オフで投げ売り状態。ここまで来ると中古ソフトを買うより少し待って新品を買ったほうがいいという気持ちになる。
○「インビクタス」はDVD&BDのダブルパッケージ3980円がこの年末には60%以上オフの1400円で売られている。(これは買う側にとっては嬉しくもある)
●洋画のちいさな配給会社、邦画のちいさな製作会社、ソフト販売会社が何社も倒れた。リクープの要だった二次利用のソフトがこれだけ売れなくなって、レンタルの売り上げもずっと下降。数年前の邦画バブルなんて言葉はいったいどこへいった。
●黒澤明生誕100周年の年としてあれこれ企画されていたAK100のイベント、プロジェクトも様々な悶着だけを引き起こして殆ど意気消沈。さして話題にもならず生誕100周年の年は終わる。もう誰彼死後何年、だれかれ生誕何年なんて言い草に食いつく程、人は暇でも退屈でも無くなっているのだろう。
●あれやこれやと見ていくと2010年は映画というものが全体として斜陽し、低迷にさらに拍車が掛かった年だと言えるだろう。
●良い映画を観たい。感動する映画に出会いたい。その感動を語り合いたい。何年も先になっても「あの年はあの素晴らしい映画があったよね」と言えるような思い出に残る一作に出会いたい。だが、そういう作品あどんどんと作られなく、作りづらくなっていっている。洋画邦画を問わず。
●映画の持っている夢だとか希望だとか、そういう光が、か細くなり風のなかで消え入りそうなりながらなんとか火を保っているロウソクのような状態に見えてしまう2010年の年末。