『エクスマキナ』

●この作品は一体どこで公開されていのだろうと思うほどの宣伝が目立たなかった。前作のアップルシードはあんなに劇場宣伝もしてたし、テレビ宣伝もしてたからいやがおうでも目に入った。更に進化した人間の動きのアニメーションということでも注目されていた。だが、続編となるこの映画は「あれ? そんなのいつ公開してた?」と思うほど全く宣伝が目立たなかった。(詳しく調べたら、一応全国ロードショーということで殆どの県で10月20日から公開されていたようだが、殆どの劇場で11月2日に公開終了となっていた模様。2週間打ち切りか? 『デビルマン』『最終兵器彼女』とマンガ原作作品の映画化ではこんなパターンが続いていた気もする)

●DVDの発売告知は渋谷駅のホームのどでかいスペースを使ったりして目立っていたけれど、DVDの発売で「あれ、この映画って公開されてたの? いつ公開したの?」と気が付くほどであった。TVCMも作ってたし、ブログもやっていたようだし、作品宣伝の道具はちゃんと用意されていたようなのだが・・・何故にこんなに目立たなかったのかが極めて不思議。製作費も相当だったし、宣伝予算も相当に組んでいただろうに。

●宣伝が目立たないのもあるが、なにかトラブルがあったのではないか? この続編は一作目の公開が始まる前に続編の製作発表がなされたということだ。「アップルシード」が鳴り物入りで劇場公開されたが興行成績はあまり奮わなかった。この結果を見て続編の配給条件を調整しようとしたが、配給側と製作会社側で条件が折合わず決裂、配給拒否。お鉢が回ってきた別配給元もあまりやる気がせず一応やりましたよという程度にしか宣伝も行わず、劇場も空きがあるところにポツポツいれただけというお茶の濁し方で終わらせた。そんな感じだろうか。(あくまで邪推であるけれど)
・色々ネットを検索していたら某掲示板に「TBS以下メディアに黙殺された」なんて書き込みがあった。なにかこの映画の公開に絡んではまともではない動きがあったか?
・文化通信の記事には「初号試写で完成度が高かったから急遽拡大公開に切り替えた」とあるが、最初はまるで期待してなくて宣伝も組んでいなかったのが、急にこれならまあ人は入ると考えを変えて急いで劇場を押えにいったんだけど、やはり無理があって宣伝が追いつかず、結局拡大公開したけど人は入らずで二週間で打ち切り・・・ということか?

●映像はゲームのCG映像のようで、なんだか映画を観ている気がしない。前作でこの絵も見慣れてしまった。普通のカメラワークじゃ難しいような映像も面白いのだが、それすらゲームの中のCGという感じで何か映画的ではないのだ。

●前作でデュナンやヒトミといった女性キャラの絵が余りに少女マンガ的で(目のなかにキラキラ星が入っているとか)ちょっと引いてしまったのだが「エクスマキナ」ではさらに少女マンガ的要素が強くなっている。これはアニオタ、二次元の美少女キャラ愛好者にはいいのであろうが、普通の人にはちょっとやりすぎで拒絶反応を出してしまうんじゃないだろうか。

●有名人、著名人のネームバリューを借りて認知を広げるというのは極々辺り前の宣伝だが、プロデューサーとしてジョン・ウーの名前を借りるというのはなんとも見え透いた浅はかさな宣伝の仕方だ。映像の中で鳩を何回か飛ばしたとしても、ガンアクションにちょっとアイディアを頂いたとしても、本当にイチから絡んだプロデユーサーでないだろうし、ちょこんとお名前だけお借りして箔を付けようとしても、そんな薄っぺらな箔は直ぐに剥がれるし、作品に対するシラケ感を増長するだけなんだである。ジョン・ウーに幾ら払ったんだろう? 同じような借名で衣装デザインにはPRADAのミウッチャ・プラダの名前が・・・・・そんなことに製作費を掛けるくらいならもっと他にすべきこともあるだろう。

●それがその作品に対するオマージュならいいのだが、どこかで見たようなシーン、映像を軽率に出してはいけない。そうでないと作り手の思慮の足り無さを露呈する。この作品、スター・ウォーズ、マトリクスを平気で想像させるシーンがありありと入っている。オイオイと言いたくなる。映像クリエイターならこんなこと間違ってもすべきではない。

●まだるっこしい1時間を耐えてようやく話と映像がリズムに乗り画面に注視できたのは最後の20分程だけ、映像をみせたいのかストーリーを見せたいのかと言いたくなる。

●「ベクシル」にしてもこの「エクスマキナ」にしてもストーリーの柱にある秘密がもう手垢にまみれた、他の作品で似たようなことを見た!というものである。ようするに脚本が浅いのだ。だから薄っぺらで白けるのだ。

●CGアニメでの人間の動作表現は確かに滑らかになり、ナチュラルになってきているのだが、やはりまだコンピューターで計算した動きというのが目に付く。動きが滑らかになったのだけれど、動きと動きの間がやはり直線的なのだ。人間の動きはきっともっと揺らいでいる。その辺まで再現出来るようになれば実に人間的な動きになるのだろうけれど。そうするとアニメとも掛け離れていくのかもしれない。少しギクシャクした動きを残しておかないとアニメらしくもないのかもしれない。