『インデペンデンス・デイ: リサージェンス』

・「インデペンデンス・デイ」第一作からもう20年かぁ、時が経つのは本当に早いなぁという感じ。

・第一作はあの巨大なUFOが衝撃的で大ヒットしたけど、段々と中身のデタラメさに“お馬鹿映画”の称号が付き、それが高じてさらには「こういうお馬鹿映画も面白いじゃない!」と逆な意味でいう評価が上がった珍しい映画。自分も映画館で最初に見た時はそれまでになかった圧倒的な映像でスゲェ〜と思ったけれど、DVDとかで見返すと、なんともお馬鹿なシーン、ストーリーが満載で、次第に「これはSF映画じゃなくて、ギャグ映画だな」と思うようになった。

・その「インデペンデンス・デイ」が20年という時を経て続編の製作と聞いて、うわー、どうなるんだろうと面白半分で期待していた。なにせ監督のローランド・エメリッヒは「インデペンデンス・デイ」(1996年)以降はと、トンデモ映画、オイオイ映画ばかり作ってきている監督で、作品の質を期待することは殆どない。「エメリッヒでしょ? どうせ!」と言われるような監督だったからだ。(興行収入はそれなりにいってるところは凄いが)

GODZILLA ゴジラ」(1998年)
デイ・アフター・トゥモロー」(2004年)
紀元前1万年 10000 BC 」(2008年)
「2012」(2009年)

・さて、そして20年ぶりに帰ってきた「インデペンデンス・ディ:リサージェンス」、CMや予告編を見るとCGIのレベルが相当に上がっているし(20年前の第一作の時は爆発シーンなどで火薬を使っていたり、日本の特撮のような撮影方法であった)、真面目でしっかりした超SF大作のような雰囲気だ! 第一作を知らない人、見たことのない人がこのCM、予告編を見たら「なんか、凄そうな映画が来たな。映像も凄いし面白そう」と思うだろう。しかし第一作を知っていると、この映像を見ながらプッと思わず笑ってしまうのである。「雰囲気は真面目で凄そうなSF映画だけどこれって・・・」と笑えてしまうのである。

ジェフ・ゴールドブラムがまたマジ顔でセリフをしゃべっていると、それだけで思い出し笑いしてしまうし、ビル・プルマンが出てくると、おお!あの大統領がまだ生きてたのか!とか思ってしまうし。「今度のは前のよりでかいぞ」なんてセリフを聞くと「ギャッハー、20年経っても前と同じことをしようとしてるぅ、デカさで売ろうとするエメリッヒは健在だぁ!」と大笑いしてしまうのである。

・ということで、今回は作品の質に期待するというのではなく、20年経っても(映像はすごくなってるだろうが)また同じお馬鹿な映画作ってるのかなぁと、そういった期待が大きく、ある意味どれだけそのお馬鹿さの期待に応えてくれるかを大いに楽しみにしてこの映画を見た!

・そして、その期待は100%裏切られることはなかった! エメリッヒは全ての期待に応えてくれた。やっぱりエメリッヒは“お馬鹿監督だw!”

インデペンデンス・デイ:リサージェンス」は史上最高のおバカ映画と言っていい。ただし、頭に“愛すべき”という言葉を付け加えておく。

この映画は古今東西稀に見る、映画史上最高の“愛すべきおバカ映画”である。(監督のエメリッヒもお馬鹿映画の代表としよう)

・いやー、予告編を見て、なんかモノスゴイ、かっこいいSF映画を期待した人は逆に頭にくるんじゃないかな? なんだこの映画は!くだらん!と怒りだすかも。20年前の第一作を観て知っていて、そのバカバカしさに愛着を感じている人にとっては「20年経ってもおんなじバカなことやってるバカ映画だねぇ」と微笑んで楽しみながら観れるけれど、初見の人にとっては「どうしょうもない映画だ」となるかも。この映画を観る人には世代のギャップが大きく広がっているかもしれない。

・今回の宇宙船は前作よりはるかにデカイというのは聞いていたが、映画の中のセリフでは全長3000キロとか言ってたなぁ。www アホちゃう? 第一作の宇宙船が全長24キロでこれはデカイなぁと驚いたのだが、今回のは言ってみれば日本列島の端からは端までと同じくらいの大きさなわけで、ここまで大きくしちゃったら、人間から見たら空全部が宇宙船なわけで、逆に巨大さとか物凄さが感じられなくなってしまっている。頭の上、見渡す限り全部が宇宙船なんだから、大きいとか小さいとかじゃなく、空に蓋がかかってるようなもの。これはやり過ぎの大失敗、流石エメリッヒ!と言いたくなったね。

・まあ、その他にもツッコミ所は満載なのだが、この映画はツッコミ所をギャグとして観なければならない。いや、エメリッヒはスタッフは至極真面目に作っているのかもしれないが、それがことごとくお馬鹿なギャグ化しているのだから、そこを指摘してもしょうがない。楽しんで笑うのがこの映画の観方とも言えるだろう。

・それにしてもなぁ、まさかインデペンデンス・デイが怪獣映画になって帰ってくるとは思わなかった。日本の怪獣映画ファン、オタクであるギレルモ・デル・トロが作った「パシフィック・リム」やギャレス・エドワーズの『GODZILLA ゴジラ』は日本のロボットや怪獣映画を尊敬し、その流儀やスタイルを踏襲してハリウッド方式で日本映画を作ったものであり、作品の出来はイマイチだったが日本の怪獣映画をここまで愛してくれているんだなという気持ちは嬉しかった。しかし、しかしだ! なんとローランド・エメリッヒはその怪獣映画ヲタの二人よりも更に更に凄い日本映画式怪獣映画を作ってくれたのだな。

・いやー、もう驚き。エメリッヒの『GODZILLA ゴジラ』は日本のゴジラの良さを全然わかってないダメダメ作品だったが、今回の「インデペンデンス・デイ:リサージェンス」は設定からバカバカしさはまるで日本のTV特撮怪獣シリーズ(ウルトラマンタロウとかに近い)であり、怪獣の描写は日本の怪獣映画のニュアンスが強く感じられる。

・ほんと、科学特別捜査隊とか地球防衛軍とか宇宙科学警備隊とかが怪獣から地球を守るって設定とその中で出てきたお馬鹿な怪獣攻撃とかの映像が今回の「インデペンデンス・デイ:リサージェンス」で巨大宇宙船や宇宙人に向かって戦いを挑むアメリカ軍の姿と似てるんだよね。おかしなくらい。この脚本家、日本のウルトラシリーズを土台にして脚本かいたんじゃない? ッて思う位。そしてなんとも、エイリアンとの戦いが・・・・おいおい、これってまんま日本の怪獣映画になっちゃったじゃないか〜と、スクリーンを観ながらびっくり仰天、そして大笑い。いやはやエメリッヒさん、ここまでやってくれるとは御見逸れしました。

・前作で出てきたキャラクターが沢山でてきて、前作をネタにしたようなギャグ(本当は真面目にやってるのかも)を披露するし、ビル・ブルマンが前大統領のくせにエイリアンを格納している場所に入っていって「俺が犠牲になる!」といって首を触手でグゲゲと締められて、エイリアン語を翻訳するシーンとか、もうホントによくもここまでお馬鹿シーンを真面目に復活させるもんだなぁと恐れ入る。

・途中からは段々先が読めてきて、あのスフィア(球体)が出てきて「敵の敵は見方」なーんて言い出すところなんかもう予定調和。アフリカの黒人の部族長かなんかがスウォード(剣)でエイリアンをズッタバッタやっつけるところとか、あんまり名前が知れていないギャラの安い、だけでかなり美形で可愛い女優をぞろぞろ出演させてるところとか、中国の巨大市場を意識して軍のトップが中国人だとか、その娘が美形のパイロット(アンジェラベイビー(楊穎)という中国人アクトレス)だとか、この女優もぱっと見、日本の昔の女優の若いころみたいな感じで可愛いとおもったが、役はスカスカのただの飾りでしかなかったし、エイリアン研究者は同性愛カップルだったんだとか、もう、いやはやサイコーですねと言えるお馬鹿の連発にただただ顔がほころぶばかり。

・意外と言えば超意外で、冒頭からシャルロット・ゲインズブールが出てきたこと。映画の情報サイトやキャストの紹介でもシャルロット・ゲインズブールに言及したり取り上げている所はほとんどないね。あの「なまいきシャルロット」の時の妖精のように可愛らしかった女の子がこんなにシワクチャなオバサンになって出てくるのはちょっと目を背けたい気分も。同じフランス人女優でも「ラ・ブーム」でブレイクしたソフィー・マルソーは歳をとっても妖艶な美しい女に成長したのだけれど、S・ゲインズブールはそれとは逆になってしまっているみたいでちょっと悲しくもあり。

・まあそんなかんなで、この史上最高のお馬鹿SF映画は、お馬鹿をどんどんと積み上げていき、最後にはお馬鹿なりにスッキリ気持よく楽しめるラストでしめくくってある。ジトジト梅雨の湿っけと、ジリジリ暑い夏の中、ひんやりと冷えた映画館でこういうお馬鹿映画を観て、あんまり難しいことを考えず、頭を空っぽにして楽しむってのがこの映画の観方なんじゃないかね? そう考えていれば充分に楽しめる。

ただし、前にも書いたがそれは前作がおバカ映画に変化していき評価を逆の意味で上げたという前作を知って楽しんでいる世代に限ったものであり、まったくなにもその辺のことを知らない人が、期待してこの映画を見たら「なんだこれは、どうしょうもない、馬鹿げた映画だ」となる可能性は非常にたかいだろうな。現にこの映画のことをネットで書いているページはそういう内容のものが多いようだ。

・この映画を観て、くだらない、馬鹿げてると思った人は、前作を観て、そのお馬鹿加減をハッハッハと笑いながら楽しめるようになってから、もう一度この新作を見返せば、楽しめると思うな。

・愛すべき、史上最高のお馬鹿映画に乾杯!