『インターステラ−』

・2時間49分 映画を映像をじわりと噛みしめるように堪能した! 素晴らしい! 久しぶりに《映画》を《観た》〚満足感〛〚充足感〛に浸れた一作。2014年ナンバーワン映画は『インターステラ−』にほぼ決まりだ。

・兎にも角にも話が面白い。難しいとも言えるが、実に巧くリズムとテンポを保ちながら全く飽きる気配など感じることなく、どんどん話に引きずり込まれていく。いや、ほんとに映画の面白さ、映画ならではの映像、展開、映画そのものの素晴らしさをじっくりと味あわせてもらった、見終えた後のこれだけの充足感、満足感も久々だ。

クリストファー・ノーランの監督作品は映像は美しく素晴らしいのだが、脚本に毎回すっとんきょうとも言えるような大穴がある。致命的な欠陥というわけではないが、その一歩手前くらいのどうしょうもない話のすっ飛ばし、監督の脳内がうみだしたような超ご都合主義的な物語の運び、脚本の粗が必ずある。それがあるから「ああ、また今回もこんな超ご都合主義で登場人物に出来るはずもない不可能なことをやらせてる」「だれがどう考えたってここはおかしいだろう」というのが引っかかって、作品そのものを両手で評価するようなことが出来なかった。

・しかし、『インターステラ−』はそういった監督のご都合主義で書いたような展開はなく、科学的検証もきっちりやったであろう、しっかりとした脚本、ストーリーであった。たぶん、こういう非常に難解な科学的な内容を含む話だからきっちりと科学者、物理学者に話を検証させたという。それがあったからいつものとんでもない“大抜け”が無くなったんだろう。
[:W600]

・マッド・デーモンのくだりは蛇足。あそこがなければもっと尺も切れただろう。あそこがあるせいでそれまで上品で高尚で気品のあった作品に濁りが出だ。まるで繊細で上品なお吸い物に醤油をどっぷりと掛けたようなおぞましい蛇足だ。

・星野先生の作品に似ているという指摘はネット上でもかなりでているが、これは誠にもって否定しがたい。話そのものもそうであるが、宇宙船のデザイン、惑星と宇宙船のカットなど星野先生の作品のあの場面やこの場面が目に浮かぶ。星野作品は海外でも英語に翻訳されてかなり出版されているが、それを基にしたというのは可能性はかなり高い、いや確実ではないか?

・ラストで、一人惑星に辿り着いたアメリア(アン・ハサウェイ)の姿が映る。そして新型の宇宙船に乗り込み旅立つクーパーの姿も・・・アメリアはあの後、凍眠カプセルに入り、誰かが自分を見つけてくれることを信じて眠り続けるしかない、たった一人惑星に辿り着いたアメリアにはそれしか選択肢がないのだ。自分はラストに期待した・・・荒れた惑星の大地で絶望に打ちひしがれたアメリアはきっと救われるんんだと、きっとこの後、ラストではアメリアがたどり着いた惑星にクーパーが時を超えて辿り着き、アメリアの凍眠カプセルを開けるのだと、そして眠りから覚めたアメリアとクーパーの抱擁でこの映画は終わるのだと。しかしそのラストシーンはなかった。・・・・・・そうあって欲しかった。きっと星野之宣であれば、それがラストシーンとして飾られたことだろう。しかし『インターステラ−』においては、アメリアの絶望とクーパーの旅立ちで映画が終わってしまった。この映画のラストは衝撃のラストだ、だが、本当に欲しかったのは身震いし慟哭するほどの《感動のラスト》だ。本当のハッピーエンドにしてほしかった。きっとクーパーはアメリアを救い出しただろう、そういう想像は出来る。だが、この素晴らしい映画のラストは本当に素晴らしい胸がすくような、涙と感動で体中がわなわなと震え出し、男でも女でもわっと感極まって泣き出してしまうようなラストにしてほしかった。そこが悔しいくらい残念なのだ。
[:W600]

・事象の地平線( EVENT HORIZON )

・吹き替えは秀逸。剛力彩芽は嫌いじゃないが、そんな実力も表現力も感情もだせない剛力に拙い日本語の吹き替えをさせて吹き替え版を最悪のものにしたフォックのプロメテウスみたいなお話にもならない愚挙をワーナーはとらなかったというだけで○

・天体物理学者のロミリー(デビット…ジャージー)は「自分はここで待ってブラックホールの研究をしたい」とエンデュランス号に一人残ったわけだが、アメリアとクーパーが最初の探査惑星(ブラックホールの超重力により時間軸が歪み、惑星での1時間は通常の7年分に相当すると計算されていた)から戻った時、アメリアが「何年経ったの」と尋ねると「23年だ」と答えているのだが、23年も経っているのにロミリーはちょっとヒゲを増やしただけで全然老けこんでいないというのがなんとも抜けている。

星野之宣作品からの流用といっても過言ではあるまい。

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_☆2009-06-01 『天使と悪魔』:この映画も星野之宣作品からアイディアを取ったと思われる。


/ハンス・ジマーサウンドは、壮大で荘厳。かってのヴァンゲリスを彷彿させる素晴らしさ。



☆インターステラ− 批評・感想 by Lacroix
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