『コンフェッション』

ジョージ・クルーニー監督デビュー作。製作総指揮スティーヴン・ソダーバーグ

●まあもうこれでもかってくらい豪華な役者の顔触れ。ソダーバーグ配下ともいえる常連役者がずらりと顏を揃えているが、正直なところこれだけの役者が出ているのに際立った演技をしている役者が一人としていない。ピン立ちしている役者も同じ、誰もいない。

●初監督を勤めたジョージ・クルーニーの力量不足で曲者役者がこれだけ揃ってもその個性を活かせないでいる。お互いに潰しあってしまって真っ平らにしてしまっている。画面に出てくる役者は、良く知った有名な俳優であり、その顏であり、その顏だけである。それ以外のものが役者からなにも滲んでこない。これならどこかの役者に演技をさせて顔だけCGIで張り付けても同じだろうなんて思う。

ドリュー・バリモア:少し痩せてて若さもあるこれなら悪くはないか。ジュリア・ロバーツ:いつも通りなんの代わり映えもなし。ブラット・ピット:出ても出なくてもいい役。マット・デイモン:出ても出なくてもいい役。
ルトガー・ハウアー:個性の強さは打ち消されてた。

●この映画の一番駄目なところは主役のチャック・バリスにサム・ロックウェルをキャスティングしたことだろう。脇役、チョイ役にこれだけ豪華有名な役者の雁首を並べておきながら、主役に認知度も役力もガタンと落ちる役者を持ってきたのでは話を引っ張って行けない。このバランスの悪さは最悪だ。

サム・ロックウェルにはいかにもチンピラっぽく、威張ってはいてもこ狡い小物というイメージはあるが、そんなものだけでは主役として映画のど真ん中で話を引っ張り、話に魅力を出し観客を惹きつけることは不可能だ。この点がこの映画の最大の詰まらなさの原因であろう。

●せめてサム・ロックウェルにもう少しの華々しさや、図太さ、他を圧倒するようなドス黒さでという強烈な個性があればなんとかなったかもしれないが、それはほとんど皆無だ。CIAの工作員というのもまるで似付かわしくない。ジョージ・クルーニーが主役をやっていたらもう少しましな映画になっていたか? 主役にジョージ・クルーニーが絡めば絡むほど、主役の色が薄くなるというどうしょうもなさ。

●ラストに用意されたドンデン返しも「ああ、そうですか? それで?」というレベルで驚きもときめきもしない。

●カメラワーク、撮影、構図、動き、画面、映画を観ている気がしない。MTVミュージックアワードを受賞しているらしいが、ばっさり切り捨てればこれは映画と言える代物ではない。映画を観ているというよりも、ミュージック・クリップでも観ているかのようなものだ。

●随分と映画賞を受賞しているようだが、ソダーバーグとクルーニーに対するおべっか受賞だろうとしか思わない。

●この一作だけで断じちゃ可愛そうでもあるが、この一作だけをみたらジョージ・クルーニーに監督の才覚もセンスもなにもないと思える。

●久しぶりに愚にも付かないと思えた一作。

2003年ベルリン国際映画祭最優秀主演男優賞、ラスベガス批評家協会賞最優秀作品賞、トロント批評家協会賞最優秀新人監督賞、ナショナル・ボード・オブ・レビュー特別映画製作者賞、最優秀脚本賞受賞。等々・・・疑問、溜め息。