『ニッポン無責任時代』(1962)

植木等・・・出ている映画は初めて観たが・・・面白い。

・このくったくの無さ、気楽さ、画面に暗さが全然無い。多少なりともサラリーマンの悲哀的な話も入っているのだが、全然それが重くも暗くもない。ホントにノーテンキな映画。しかしそれが異様にイイ。このテキトーでノーテンキで楽天的でお気軽な雰囲気がビックリするほど明るく気持ちいい。

・どうも昔の邦画というのは暗くて重くてじとっと暗雲がたれこめているようなものばかりという気がするのだが、1962年なんて時代にこういう映画をつくる精神、気概はなかなかだ。

・また、昔の邦画はどうもテンポが悪くてだらだらと詰まらない、観ていて飽きてくるようなもの、退屈なものも多いのだが画面にスピードもあり、テンポも早く弛れない。ポンポンポンと素早く話を展開していく。笑劇としても実に小気味イイし、現代的。いや、ひょっとしたら今の世の中で作られる映画のほうが、この映画よりかえって暗くて重くなっているかもしれないなぁ。

・雇用不安、将来への不安、ボロボロのニッポン。世界。今、こういう映画を作ったとしても受けないだろう。世の中に暗雲が垂れ込めて、こんなサラリーマンなんてあまりにあり得ない、ふざけてるとなってしまうから。もともとオフザケの映画なのだが、1960年という、時代はまだまだ暗かったけど将来に向かって、未来が明るく開けていたそんな時代に作られたこんな信じられない明るい映画。それに反して、将来にむかって明るい未来が見えず、どんどん未来が悪くなっていくような今、そんな今ではこんな映画は作れないだろうし、作っても受け入れられないだろう。

・この時代はまだ前に向かっていく希望とかがあったから、こういう映画が作れたし、ヒットもしたんだろう。

・いや、この手の作品はほとんど観ていなかったのだが、凄いね。こういう映画はバブル期位までしか作れなかった。今はほんとに悪い時代になって映画もそれを映し出している。

・これは当時の時代、社会、世相に対する皮肉であり逆説的映画であるのだろうけれど、今の時代にこれを観ると却って対する逆説として捉えたほうがイイかもしれない。

・こういう映画を作ることのできた精神の自由さ、心の晴れやかさ。前向きで勢いのある生き方。凄いな・・・

・この映画を観ていたら、今の時代の日本のどうしょうもなさが痛切に感じられる。今就職活動なんてしていたり、社会人になったばかりで忙しく仕事している会社員がこの映画を観たら、どう思う?ありえねーとかいって肩を落としてしまうのではないだろうか?あまりの今との違いに、昔のほうが良かったと思えてしまうんじゃないだろうか?