『てぃだかんかん〜海とサンゴと小さな奇跡〜』(2010)

・岡村が予想を遥かに超えて非常にイイ。最初は沖縄弁がわざとらしく聞こえたが、それに耳が慣れてくると朴訥ながら真面目に演技する岡村の姿が本当にイイ。意識して演じているのか、演技として考えないでやっているのか、監督の指導がいいのか・・・なんにしてもこの岡村の感じ、醸す雰囲気が話しにぴったりとはまっているし100%馴染んでいる。

松雪泰子もいくらなんでも合わないだろう、と思ったのに岡村との夫婦姿がまたなんともしっくり来ている。

・そして國村隼の演技がこれまた最高である。

・沖縄の海と空気に包まれて、心優しい人々と、心を動かす実話が登場人物を演じる役者皆の演技に表情に言葉に心に、ひょっとして奇跡を呼び起こしているのかもしれないな。それがこんなふうに温かい空気を映画に漂わせているのだろう。

・沖縄ブームが映画にも波及してやたらめったら沖縄を題材にしたり、沖縄ロケを宣伝文句に使った映画がうじゃうじゃと溢れ出てきたのは2004年頃からだろうか? 沖縄で撮られた中江裕司監督の『ナヴィの恋』(1999)や『ホテル・ハイビスカス』(2002)が予想外の全国ヒットになり、プロデューサーが沖縄モノなら当たると踏んで、大した煮詰めていないいい加減な沖縄映画が次から次へと出てきた。そんな状況が続いていたせいか、沖縄モノと聞いただけで目を細め、さらにはアイドルやらお笑い芸人が出ているなんてことになると、もう観る前からどうせ下らないだろうという先入観が気持ちのなかに湧いてきて、観なくてもいいやという気になってしまっていた。

・この映画も上映当時、作品名くらいは耳元をかすめて通り過ぎて行ったが「また沖縄モノか、しかも岡村か・・・駄目駄目だろうな」と思って、観てみたいという意識が全然湧いてこなかった。

・先入観にとらわれて観ないでしまっている映画が思いの他良かったというのは悲しいかな今までにも何回もある失敗だが、この映画は正にそういう一本、観ないでいたことが大失敗だった、だけど今これを観ることができてとても幸運だった。

・これはイイ映画だ。技術とか斬新さとか映像とかそういったものではなく、映画そのものとして、映画そのものである話が非常にイイ。これは、家族、兄弟、恋人、子供、おじいちゃん、お婆ちゃん、誰に勧めても間違いのない良作。



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