『狂った果実』(1956)

逗子や鎌倉の駅の雰囲気は半世紀もまえなのに今とほとんど変わりないな。

この当時の日本の社会状況では逗子で海水浴をしたり、ボートで沖に出たり、水上スキーをしたり、ヨットにのったりということは物凄くゴージャスで憧れの夏の生活だったのだろう。

敗戦から10年、焼け野原のなかからようやく立ち上がって来た日本でも、極々一般の多くの人の暮らしはまだまだ貧しく、汗水たらして毎日働く辛い日々であったのだろう。そん中で映画は数少ない娯楽であり、スクリーンで観る映画スターや、その華やかな生活はいつかは自分もこんな風な暮らしをしたいという憧れであったのだろう。

1950年代後半、白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫の家電3品目が『三種の神器

女性であろうが、男性であろうが芝崎から沖まで出て一色まで泳ぐなんてありえないだろうけれど。

殆ど演技になっていないような演技

岡田眞澄は確かに美男。北原三枝は古風。明るく純粋で素直そのものといった津川雅彦がラストで陰湿な内面の闇をしっかりと表情に浮かび上がらせているのはなかなか。

海に浮かんでいる人をボートでひき殺すというのはスクリューでズタズタにされる可能性があるわけで、車でドンとひき殺されるよりもよっぽど残酷な殺し方である。

確かにフランス・ヌーベルバーグの匂いがある、ただし、それはラストシーンがあるから、ラストシーンのみにだ。このラストシーンがなければそれはなくなる。

太陽の季節がその内容で話題になり、映画化もされたので、柳下のどじょうを狙って同じ年に直ぐ製作された映画ということか。

撮影期間17日、低予算。中平康監督

2009-07-13 『太陽の季節』(1956)

2008-03-17 『八月の濡れた砂』(1971)