『天平の甍』(1980)

●社会派監督 熊井啓作品、原作:井上靖

●これも名前はしばしば聞く作品だが、ずっと未見であった。

●話、本(脚本)のスケールは日本から海を渡り唐の仏教世界間で広がっていて極めて大きいのだけれど、観る映像にそのスケール感が無い。

遣唐使、鑑真和上に関する歴史物として映画というよりも、史実を説明するような作品。

●ナレーションで話を進めるのは映画としてはよくない形である。これは、ある意味映像表現自体を回避していることにもなる。だからこの作品は映画というよりも日本の仏教に影響を及ぼした一人の歴史人物の解説映画のようになってしまっている。

●唐の人々も僧もみな日本語でセリフを話している。これも今作ればより真実味を出す為、中国語での会話になっていたことだろう。当時としてはそこまではやりきれなかったということであろうが。

角川映画の大ブームから勢いづいた邦画界が、とにかく大作を!社の威信をかけた名作を撮れとばかりに製作したような映画。

●もし、今の中国がこんな映画を作ったら(作らないだろうが)物凄い金の掛かった映画が出来ていたことだろう。1980年頃の当時としてはふんだんな中国ロケなど、相当の予算が投じられた作品であろうが、絵に日本と中国をつなぐようなスケール感は感じられない。