『ラスト・オブ・モヒカン』(1992)

マイケル・マン監督

フレンチ・インディアン戦争の時代を生きるインディアンの姿を描いた壮絶な物語。

●社会派の硬派な現代劇の印象がつよいマイケル・マンだが、西部開拓時代を描いたこの作品にも人間や組織の愚かさといった監督が描き続けてきた一本の芯が貫かれている。マイケル・マンの作品の中では異色とも言える1作だが、この映画は高く評価できる。

●もう最近では西部開拓時代の映画や、インディア、ウェスタン映画はめったに作られなくなってしまったが、この分野の映画としては白眉な1作だろう。

オハイオ雄大な自然、美しい映像、美しく雄大な音楽。どれもが素晴らしい。

●インディアンに襲われながらも指示待ちで手にした銃を発砲することもなく殺されていく英軍兵の悲しさ。

●映画の役とはいえ、マグアには本当に心底憎たらしくなる。ウェス・ステューティは味のある顔、アバターの族長エイトゥカン役もやっていたか。

●マリア思いを寄せていたウンカスがマグアに殺され、マリアも崖から身を投じるシーンが、この映画の中一番に美しくも悲しくそして素晴らしい。その後、最大の悪役であるマグアが老齢のチンガチェックと対決し倒されるシーンは手を叩いて喝采を送りたくなる。黙して語らぬが内に秘めた力を感じさせるチンガチェックの姿に本当の男の勇者の姿が強烈に描かれている。

●ダニエル・ディ・ルイスの若いこと。撮影当時で35歳位か?『ギャング・オブ・ニューヨーク』(2002)や『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(2007)の極めてアクの強い性格俳優的なおじさん役のイメージが強すぎて、この作品の精悍で力強い男役がまるで別人の如きである。
ヒロインでもあるコーラ役のマデリーン・ストーは美人で印象にも残っている顔で、色々な映画で見ているんじゃないかなと思ったが、記憶に残るような映画、役が思い出せない。