ゴジラ映画第二作
●『ゴジラ』第一作は名作として何度か観ているのだが続く第二作、第三作、そしてなどの古いゴジラ映画となるとかなり記憶が曖昧だ。有名なシーンは断片的に頭の中に思い浮かぶのだが、通しで観た記憶がなく、ストーリーが蘇ってこない。どれもこれも知っているような知らないような状態だ。だから、ちょっと時間のある時に古いゴジラシリーズを観てみようと思った。
●ゴジラの登場シーンは第一作に続いて怪獣映画としての迫力と怖さの演出が巧みだ。岩の間から見上げるようにしてのぞく空に、ゴジラとアンギラスの姿が出てくるシーンは本当に怪獣を見ているかのような怖さがある。
●モノクロ映像の持つ迫力というのもあるだろうが、この映画に出てくるゴジラとアンギラスは気ぐるみの造形物と分かっていても、まるで本物の生物の如き生々しさ、生命感があり、不気味な生物の怖さがある。アンギラスの表情やゴジラに噛み付く様などまさに狂暴な獣が獲物に襲いかかっているかの如きだ。
●その後の怪獣映画のように、子供向けに妥協、懐柔したような部分がまるで無い。不気味で恐ろしい怪獣の映画だという本筋をこれっぽっちも歪めていない所が凄い。
●映像的な部分は今見ても凄さを感じるのだが、脚本とストーリーという部分になるとかなりの粗といい加減な設定、辻褄合わせが目に付く。ストーリーは都合のいいエピソードが製作側の頭の中の都合で繋ぎ合わされ、観る側の立場に立って検証している雰囲気は無い。練り込まれていない脚本、緻密さのないストーリー、セリフ、演出。古い作品とはいえ、これは観ていて少々キツイ。シーンの切り替えも悪く、ストーリー流れも悪いのでぶつぶつと話が途切れながら繋ぎ合わされているかのようだ。
●こんなエピソードやこんなシーンはいらないだろうと思う部分もやたらと多い。作品として煮詰められていない感は拭えない。
●狂暴なイメージのアンギラスも割と簡単にやられてしまうのが残念。海に転げ落ちるシーンは迫力があるのだが。
●黒澤映画の常連とも言える人が黒澤映画とはまるで違ったキャラクター、イメージで登場しているのは面白い。(志村喬、千秋実、土屋嘉男)
●人間批判、社会批判を内包した怪獣映画として出来上がった本多猪四郎の『ゴジラ』、その続編として作られた『ゴジラの逆襲』だが、第一作で本多猪四郎が創り上げた”ゴジラ”は第二作でもしっかりと継承されいた。その点はゴジラ・ファンとしても非常に嬉しい。
●脚本、ストーリー、設定に粗がありすぎ、陳腐でもあるるので作品として褒められるような出来ではないと思うが、半世紀以上前の作品でありながら映像の迫力は凄いといっていいだろう。ゴジラ、ガメラ、ウルトラシリーズなど、その後の怪獣モノ映画、テレビ番組では怪獣が怪獣らしさを失い、子供向けに角の丸まったキャラクターになってしまった。だが『ゴジラの逆襲』におけるゴジラとアンギラスの造形、動き、描写にはそんな丸めた角など一切見当たらない。ビシビシと尖った怖さ、個性がそのままに剥き出しにされている。本来怪獣映画というのはこういうものであるべき、決して子供向けに作らなかった大人でも鑑賞できる怪獣映画だからこそ今観ても映像に力があるのだ。
●だが、どうして第一作を大ヒットさせた本多猪四郎が第二作では監督から外れたのだろう??