『パプリカ』

●冷蔵庫やカエルやえびす様などが行進するシーンは『イノセンス』(2004)に非常に似ている。アングルも仰ぎ見る感じで同じだし、非常に似通ったイメージ。真似をしたとかではないだろうがひょっとするとオマージュ的な部分が入っているのだろうか? 日本人形やらパプリカの顔つき、その他のキャラも微妙に押井守色が出ている。

●話はなんともごちゃごちゃしていて良くわからない。きちんとしたストーリーはあるのだろうが、構成が入り乱れていて理路整然としていない。ストーリーの構成としてはもう破綻一歩手前位のぐちゃぐちゃさではなかろうか。

●だが、映像は流石に凄い。スピード感があり、角が立ち、実に観る者に対して攻撃的な絵だ。

●普通アニメーションというのは何らかの部分で子供向けに作られるものが圧倒的に多いのだが、この作品に関しては完全に大人向け。大人向けの絵であり大人向けのストーリーであり、これっぽっちも子供向けに歩み寄るような所がない。こういうアニメーション映画は珍しい。完全に大人向けのアニメ。(どこからが子供でどこからが大人かという境界線は難しいが)

●実は映像よりも自分としてはバックに流れる平沢進の音楽が非常に印象的だった。このテクノポップ感覚には懐かしさと新しさが同居している。この音楽のフィーリングは他にはなかなか無いものだ。

●パプリカの顔つきにはなんだか官能的でチョットずるいエロティックぽさが浮かんでいる。AV的??

●美人の主役が恋してるのが天才とはいえデブデブのオタクという設定もあえて捻っているのだろうか。

●粉川がパプリカにパンフォーカスとイマジナリーラインを説明するくだりが面白い。粉川の帽子とサングラス、そしてパンフォーカス。黒澤明をこんなところで出してくるとは。(笑)

●あちこちに色々な映画のオマージュが仕組まれている。
△オモチャの車の中から無理矢理収まっていたピエロが現れるシーン
『地上最大のショウ』(THE GREATEST SHOW ON EARTH/1952、米/監督 セシル・B・デミル
△ギターで男の頭を殴るシーンは『ローマの休日

●このブログで「宝探しをするような最近の映画の傾向は好きではない」と何度か書いているが、この位ならば許そう。

●話がわかり難いし、ラストで感動するようなストーリーでもない。確かに、マニア向けと言えるような映像で、広く一般に受けるというタイプの作品でもない。だが、やはりこの映像感覚は唯一無二のもの。観始めたら目が離せなくなる独特の個性と強烈な磁力をビシビシと発している。

●2010年8月24日 監督である今敏氏が急逝。わずか46歳。癌を宣告された時点で余命半年。人ってそんなに簡単に死んでしまうのかって、思ってしまった。もし生きていたら・・・もっともっと観たことのないような映像を創り出していただろう・・・アーティストは短命という言葉を噛みしめる。

今敏オフィシャル・サイト:http://konstone.s-kon.net/
☆Kon's Note『さようなら』:http://konstone.s-kon.net/modules/notebook/archives/565

☆パプリカ公式ブログ(2007年のyahooブログなのでいつか消えてしまうかもしれないが)
http://blogs.yahoo.co.jp/paprika_movie