『ミスター・アーサー』(1981)

●よくある定型的シンデレラ・ストーリー。「プリティーウーマン」や「愛と青春の旅立ち」やその他多数の作品で使われているお話。 しかし、ごろごろ転がっているようなこのタイプの映画と全くもって違う点が、男役が全然カッコよくないというところ。これはある特異な映画とも言える。

●シンデレラ・ストーリーといえば、白馬の王子様が出て来て、見ている者をロマンチックな夢物語に連れて行くのが定石なのだが、この映画の主人公は、運転中だろうが、なんだろうがいつも酒を飲み続けて、ぐでんぐでんに酔っ払っているまるでカッコ悪いアル中のような男。大金持ちでなかったらどこにも魅力もなにも無いダメ男。こんな男をシンデレラ・ストーリーの王子様役にあてがっているというのが奇抜であるし、面白くもある。

ライザ・ミネリはキュートで可愛らしい。『キャバレー』があればこそ、その知名度の高さを知らぬことはないものの、考えてみれば他の作品は殆ど観ていない。

●脚本がかなり強引。結婚を破棄されたスーザンが可愛そうでもある。怒ったスーザンの父親を平手一発で黙らせてしまう叔母さんなど、痛快ではあるが、ちょっとストーリーの運び方、落とし前の付け方が強引過ぎる。

●内容としてはちょっと稚拙と言える。それほど脚本を煮詰めることもなく、金持ちとダウンタウンのウエイトレスが結婚するという話をあれこれ装飾しただけという映画。日本のテキトーなTVドラマレベルといってもいいかもしれない。

●前述した全然カッコ良くない男役というのは、監督らのシニカルな諧謔なのだろう。

●そこそこ話題になった作品なのにDVD化されていない。倒産したオライオン(ORION)絡みがあるのだろうか? 久しぶりにオライオンのロゴを見た。

●音楽:ニューヨーク・シティ・セレナーデ クリストファー・クロス・・・・ちょっと懐かしい。

●監督:スティーブ・ゴードン ・・・その後は映画を撮っていないのだろうか?

●見るべき点があるとすれば、執事役のジョン・ギールグッド(炎のランナー:トリニティの学長、ガンジーエレファント・マン、エリザベス)位のある貴族、執事という役ではこの人ほどぴったりの人はいない。主役級で出演していることは殆どないのに、ああこの人だと記憶にしっかり残っている役者。
Xファイル・ザ・ムービーにも出ていないかったか? 何故か王侯貴族、イギリス、秘密結社などという映画を思い出すと、すべてにジョン・ギールグッドが出ていたような気がしてしまうから不思議だ。