『ユビサキから世界を』(2006)

谷村美月は今まで見た映画の中ではいちばん良いのだが・・・・それは一番普通の女子高生という役をしているからか?他の映画ではなんだか突飛な役ばかりあてがわれているようだから、ちょっとエキセントリックな女優になりかけている気がする。この映画の中では素直なかわいい女子高生だ。

●さるバンドの「ユビサキから世界を」という曲にインスパイアされて行定勲が作った映画だということだが、そのバンドの曲が、ユビサキからだって世界は変えていけるんだ!という崇高な戯言、甘っちょろい理想主義を照れもせず歌っているものだとしたらそれは素晴らしい。そんな純な思想が本当に世界を少しずつ変えていけるかもしれない。だが、それにインスパイアされて作られたというこの映画は・・・これのどこがユビサキから世界を変えていけるってんだろう??

●少女趣味に偏ってる監督が女子高生の戯言をだらだらと流しで撮っているだけなんじゃないの?? としか思えん。このストーリーのどこがユビサキから世界を変えていくという思考や志向を持っているというのだろうか? あまりに簡単に適当につくり過ぎたやっつけ映画としか思えない。

●どこかで全く同じような映像、話の展開を観たような気がするなと思ったが、ああ、なるほど「JAM FILMS」(2002)で行定勲が監督をしていたショートストーリーともうまったくそっくりな内容だ。60分弱という短い尺だから許容できたが、これはもう思いつきをただたんにカメラを回して撮っただけで全然深堀りもなにもされていないサラサラ、ヒラヒラのビニール袋みたいな映画だ。

●車に魅かれて、土の中に埋められて、キャリーよろしく手が土の中から出てきて掘り起こされて、汚れてもいないセーラー服で友達と一緒に自殺しようといった学校に駆けつける・・・・始めからギャグだといわれてたとしてもこれじゃナンセンスにも程がある。

●こんな作品撮って監督って呼ばれていられるなんてある意味相当に幸せかも。

●そういえば行定勲の作品は初期のころの「ひまわり」や「贅沢な骨」辺りのほうが良かった。岩井俊二の二番煎じなどとも言われていたけれど、それなりに微妙な危なさと味があった。全作を観ているわけではないが、「GO」も「セカチュー」も今一つだったし「遠くの空に消えた」もなんだかなぁという作品だった。他もあまり良い話を聞かないから観ないでしまっているが、あれこれ評判の悪い「クローズド・ノート」が一番しっかりしている作品のようにも思おう。

●たくさん撮ってきてるし、そろそろ本腰を据えてがっしりした代表作といえる良い作品を撮って欲しいものだが。



これはいただけない映画だ。