『イーオン・フラックス』(2006)

・公開当時、シャーリーズ・セロンの美貌に魅かれて観た記憶があるが、余りにつまらなく、ありきたりなストーリーにがっかりして、中見がどんなものだったかとほとんど飛んでしまっていた。シャーリーズ・セロンがぴょんぴょん飛び回り、芝生から付き出てきた針状の物質を顔面ギリギリのところをかわすというシーン位しか頭に残っていなかった。

・改めて観たけれど、やっぱり詰まらない。詰まらないというよりうんざりというべきか。話のなかで設定されている状況や背景の設定がこれまでさんざんにSF物で使われてきた部品のよせあつめのようなもの。斬新な設定、驚くようなストーリーなどがまるでない。あるのは今までよく観て、効いてきたようなお話ばかりだ。

・ウイルスで世界が滅んだとか、クローンでスーパーヒューマンを作ったとか、ある一族が権力を握り未来社会を支配しているだとか、その権力に対抗した地下組織が出てくるとか、もうさんざん使いふるされたようなお話の集合体。これでは面白さなど出てくるはずもない。

・一言でいうならば、この映画の全てが類型的であり、パターン化されたものであり、使い古されたものであり、新しいアイディアや斬新さなどが見受けられないのだ。ストーリーにも映像にも。

・まるで精子のように妙な触手を垂れ下げて空を進む船もどこかで見たことがあるなというデザインだし、未来社会の風景そのものもなんら目新しさがない。

シャーリーズ・セロンはもう少し色っぽさや妖艶さ、エロスがあっても良さそうなものだが、それも感じられない。タイトなボディコンスーツを着ていてもまったくかっこいいわけでもなく、胸元を大きく見せていてもまったくエロスがない。1975年生まれということだから撮影当時30歳位であり、こういった役をするには少し歳をとりすぎている。

・しかもこの映画の中のイーオン・フラックスは主役ではあるのだけれど、ヒロインという輝きも華やかさもない。ボディコン、コスプレでオタク男子の色情を刺激しようとしたのかもしれないが、このコスチュームとシャリーズの顔付き、スタイルの組み合わせには下半身を刺激する要素は薄い。まったくエロくないし、かっこよくもないし、ヒロインでもないし、大して強くもないし、身軽に飛び回っているだけのオバサンでしかない。コレじゃあダメだろう。

・そもそも正統派の美形であるシャーリーズ・セロンにこういうった役は合っていないのだ。この女優には豪華な衣装できらびやかな役、真に美女的な役があう。そうでなければ、極普通の女性を演じつつも実は美形という役などがいいだろう。SFのこんなへんてこなスーパーウーマンのような役は全く馴染めない役なのだ。

・よくわからぬストーリーにも全く気分が乗らないし、主人公の心の葛藤も観る側の心を揺さぶるようなものでもなく、ラストに至っても「ああそうですか」「これでおしまい?」という感じである。

・美形のシャーリーズ・セロンを使って人気のアニメを実写にすればヒットするだろうという程度の考えで作られた軽薄な一本というべき作品。

・これでは観ても何も残らないはずだ。

・S・セロンが1975年生まれと言う事だから撮影当時は三十路。このアクションヒロインには無理がある。