『最終絶叫計画 SCARY MOVIE』(2000)

●もう何度も観ているが、たまに息抜きに観ると面白い。新しい発見? もあるし。

●一切合切、聖域なし、有りとあらゆることをパロってコケにしてバカにしているのが凄い。怖いもの知らずというか、ハリウッド業界が後ろにあるから何だって大丈夫ということなんだろうか? こんなことは日本ではまず出来ないだろう。ある種の特殊な団体、部分を映画で風刺なんかしようものなら有形無形の威圧、妨害がすぐに発生して、映画上映どころか関係者やその家族まで危険になる。だからある特定の部分には寄らず触らずとなる。

●この映画みたいにドスドスとナイフを突き刺すように風刺すべきこと、コケにしてバカにして貶めてやるようなものが日本の社会にはネタとして山のようにあると思う。特に政治家の悪らつさや、腹黒さ、税金の私的流用などをコケにしまくれば、それだけで90分の映画が何本かできそうだ。そういう映画、日本で作られないものか? 無理だろうなぁ、製作する会社も、配給する会社も敢えて面倒なトラブルに絡みたくないだろうから。

●シンディを演じるアンナ・ファリスってけっこう美形なのだが、よくぞここまでの役をやるなぁと感心する。ここまで下ネタ満載で、スペルマまみれなんて役、日本だったらイメージが壊れるからって殆どの女優は受けることがないだろう。事務所も嫌がるだろうし。もしやるとしたらAV系に話が行くのが落ちってとこだろうなぁ。

●最初の方でキャンパスの芝生に横たわるシンディーのTシャツに、○○川カントリー倶楽部という文字が出ているのに気がついた。日本のどこかのゴルフ場のTシャツ? ゴルフ場でこんなTシャツ売っているとも思えないし、なにかのイベント用? よくこんなもの見つけて使ってるなぁ。

●黒人差別から、老人虐待、ハイスクールでの教師とのセックス、妊娠、マリファナ、コカイン、そしてありとあらゆる下ネタ、排泄ネタ、セックスネタ・・・・ホントに何でもかんでもよくここまでパロって馬鹿にしてるなあと面白い上に感心してしまう。

アメリカ社会で表面的にはシーツを掛けられ隠され、見えにくくされている黒人差別。警察に助けを呼ぶときも「WHITE WOMAN IN TROUBLE」"白人女性が"としなければ警察は来ない。こういう痛烈な皮肉はアメリカを自由の国、素晴らしい国と謳う知識人層、白人層にとっては触れて欲しくない部分。それすらも諧謔化し皮肉るのだから凄い。

●こういう映画が作られるということが、アメリカの懐の深さであり、一部分ではあるが良いところなのだろう。

●それにしてもSCARY MOVIEの邦題を最終絶叫計画としたのは素晴らしい!こういう邦題の付け方は称賛に値する。

●こういう映画は吹き替えが一番だ。ジョークネタの情報量が多いから、字幕を追っていると面白さが半分位になってしまう。これだけのジョークを日本語に吹き替えるには、英語と日本語両方のジョークを理解する相当にハイレベルの語学スキル、そしてユーモアのセンスが必要だ。そんな心配をよそに、この映画の吹き替えはかなり満足できるものになっている。いや、本当にこの訳をした人、声優は素晴らしい。良くできました!拍手。
(日本語吹替訳:原口真由実)

●気がつくと何年かおきに観ているという、不思議な魅力のある映画。

◇尺88分、一作目はヘラルド配給、ソフトはアミューズだった。