『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』

●この手の過去の映画をパロった作品としては「最終絶叫計画」とその後のシリーズが直ぐに思い浮かぶが、この映画は確かに金の掛け方(浪費の仕方)が随分と派手だ。製作費、予算が「最終」シリーズの何倍なのよ?と思ってしまう。

●だが、この映画、グロ過ぎてダメだ・・・。

●最初から腹を切り裂かれて内臓が飛び出たシーンや、両手が吹き飛ばされてグシャグシャになった絵などを見せられるとオエッという気持ちになる。もうこの時点でこの映画はやり過ぎてるなと怪訝に感じる。デート・ムービーとして選択したら嫌な顔をされるに違いない。その後のギャグも吹き飛んだ首を作り物として指を突っ込み、こぼれる血を知らん顔で舐めるなどあまりにやり過ぎで顔をしかめてしまうシーンが続く。

ジャック・ブラック絡みのデブ、ゲイ、ドラッグ、しゃぶれ、などのネタは観ていてうんざりしてきた。

●内容があまりにブラックでエグ過ぎるのだな。この映画に品を求めるなんて馬鹿げているだろうが、あまりに卑下た作品、下品過ぎる。ここまで来ると自分としてはもうごみ箱にポイである。

●この作品にヤンヤ、ワイワイと喝采を送り大ヒットしたアメリカというのもなんだかねぇ? 客層は通常の映画ファン層とは少しばかり違っていたのだろうけれど。週末に映画館に気軽に繰りだして、ポップコーンをボロボロとこぼしまくりながら頬張って、劇場中でゲラゲラ笑ってそれで帰る。低俗だなんだと言われようと、サタデー・ナイト・ライブのようなものでそれが一つの生活習慣として定着している国では受けるのだろうが、日本でこれはダメだろうね。日本ではポップコーンを頬張って大騒ぎするような映画の鑑賞スタイルは無いのだから。自分としてもそういう映画の鑑賞スタイルは全然好きではない。何もかにもアメリカスタイルでやればいいってものでもないし。

●同じような過去の映画をパロった作品としては『最終絶叫計画』「SCARY MOVIE」のシリーズがあるが、これはオバカ映画としてエログロには行かなかった。下半身系の話題はお決まりとして入っていたけれど、エグさグロさは目に余る程ではなかった。少なからずウイットのあるギャグも含まれていたし、このシリーズはオバカ映画としは好きな方だ。

●「最終絶叫計画」と「トロピック・サンダー」を比べると、見終って「バカだねぇこの映画、よくここまでオバカやるね」と思う部分は同じなのだが・・・・

「最終絶叫計画」は、オバカだねぇ、でもまあ面白かった。よくまあこういう映画作ったね。凄いよ。

「トロピック・サンダー」よくまあこんな映画作ったねぇ。笑えたけどエグすぎて好きにはなれないな、これ。

という感じである。

●「トロピック・サンダー」は見終ったあとになんだかすっきりしない、ちょっと酷いねこれは、と印象の悪さが残る映画である

●映画のパロディーネタ、有名役者のカメオ出演など映画好き、映画オタク、映画評論家などはこういうタイプの作品を好むが、誰がどこに出ていた、あの映画のあのシーンだと分ってご満悦していたってどうしょうもないでしょ!と思うこの頃である。

●とある映画評のページで冒頭に映されるニセの予告編と映画会社のロゴについて書いているのがあったが、親会社のロゴに似ているからこれもフェイクだと書いていた。これはオフザケ映画なのに文芸系のサブスタジオのロゴを使っているという業界ネタの悪ふざけなのだが。。。まあそういうのはあちこちにあって、それを一つ一つチェックして拾い上げて行くというのも暇な人、映画通と称する人には面白いことかもしれないが・・・・。

●噂のメタボなトム・クルーズは流石に最初に出てきたときは気が付かなかった。それでもやたら目つきが光ってるし、オーラというか顔のアピールが強いから「この役者誰だろう?」とは思っていたのだが・・・途中で分って驚いた。ラストのダンスは・・・・おぞましい俗物という感じを見事にだしているなぁ。


●「最終絶叫計画」のシリーズも二作目以降からは、最初から銀座シネパトス(あの古さ、ボロさは嫌いではないが)で公開という劇場公開作品!という名目を作るだけの公開となっていったが、この手のギャグ映画は日本では確かにあまり受けない。前に書いたように劇場でみんなで騒ぐという鑑賞スタイルもないのだし、そういう鑑賞をするのに今の興行料金
1800円は高過ぎるというのもある。だからこういう映画はビデオグラム化されてから、家で友達を集めて観るとかの方がいいのだ。セル商品としても余り売れないし、やはりこういう作品はレンタルが1番なのだろう。

●映画は映画館で観るべき!というのは確かなのだが、それは映画としてのスケール感、臨場感を味わえる作品であればこそのこと。映画館で映画を観ることが作品鑑賞としては当然なのだ、1段格上なのだとさも当然のごとく言う評論家、映画ファンが殆どだが、アメリカなどとは鑑賞スタイルの違う日本では、こういった映画は別に劇場で観る必要などない。最も楽しめるスタイル、鑑賞方法で観るのがイチバンなのだ。家でソファーにゴロッと寝転がって、コーヒーをすすったり、ミカンの皮を向きながらだらだらと観て、ハーくだらないねぇ・・・と思えばそれでいい。そういう映画であろう。

●実際、劇場で観るほどの価値無しと思える映画は洋画、邦画を問わずざらにあるし、儲けを出すための映画の作り方が、劇場鑑賞よりもホームエンターテイメントを意識した映画作りに寄ってきているというのも事実である。