『ホテル・ルワンダ』(2004)

●いい作品だとはかねがね聞いていたが、内容の重さに気持ちが向かっていかずずっと観ないでしまっていた。なぜかこの真夏の暑い夜に見ることを選択してしまったが、ヘビーだった。真夏の夜に見るような映画ではないが、観なければいけない映画であった。

●内容の重さから日本公開が見送られ、アメリカ公開の二年後、有志の「ホテル・ルワンダを応援する会」の署名によって日本での上映が決まったという。(寡聞で、今日の今日までそのこともしなかった)

●なるほど「ガンジー」を観たとき以上の胸に突き刺さるものがある。同じ土地に住む同じ人間同士がここまでのことをしなければならなかったのかという恐怖。カンボジアの虐殺、それ以外にも今までの歴史のなかで繰り返されてきた人間が人間を大量殺戮すること。結局人間は理性のタガが外れればとてつもなくおぞましい行為を平然と行える恐ろしい生物だということなのだろう。内戦や虐殺というのはその直接的悲惨さでおぞましさの度合いが高いが、日本もアメリカも、イギリスもその他のこれまで戦争という行為を行ってきた国とその兵士は、虐殺には見えない、思えない影のなかでもっともっと大量の人を兵器の力で殺してきたのだから。

●まるで実写ドキュメンタリーを観ているかのような映像、大量殺戮のシーン。胸が抉られるようで苦しくなる。

●こんなことが今の世の中で起こっているなんて信じられない・・・そう思ってしまうのは取り合えず生きることは保障されている日本という国に生きているからなのだろうけれど、今この国からこの映画を観て胸をグサグサと抉られる気持ちになっても、自分には「こんな酷いことがあるんだ」という記憶を頭の中にのこすだけなのかもしれない。 虐殺のシーンをジャーナリストがニューストップで放送するように指示したとき、もう一人の記者が「世界はどうせ、ディナーを食べながら酷いことがおきてるのね、と思うだけさ」というシーンがある。まさに自分もそうであるし、世界もそうであるのだろう。

●お涙頂戴やいかにも正義を掲げるという内容でもないところが非常にいい。これは脚本、監督の視線が観客やスタジオではなく、作品の中身にしっかりと向いていたということだろう。

●こういう作品は映画としては別種のものだ。映画は芸術か娯楽かと二者択一論が一般的だが、こういった作品はそのどちらでもない、社会性の高いこういった作品は歴史物とも言えるし告発物とも言える。デートムービーにはならないし、見て楽しめる映画でもない。だが映画という大衆が観ることのできる映像作品で、こういった内容のものを取り上げることは非常に大切だ。NHKスペシャルNHK特集に近いとも言える、

●まだ観終わった重さが胸に残る。こういった映画のことは書けない、書きにくい・・・それは逃げでもあるのだけれど。

●ヘビーではあるけれど、これは観るべき一作。「ガンジー」や「明日への遺言」などと共に、心のリストに常に載せておく作品であろう。

☆2011/7/21
・NHKBS 世界のドキュメンタリー
ルワンダ 仕組まれた大虐殺〜フランスは知っていた」(2007/11)
ルワンダの虐殺にはフランス政府が関与していた。
「100日間に80万人の犠牲を出しながら、いまだに真相が謎となっているルワンダの大虐殺。事件から15年を経た2008年、ルワンダのカガメ大統領は、虐殺の計画にフランスが積極的に加担していたことを示す報告書を発表した。1994年にルワンダで何があったのか、なぜ事実が表に出なかったのか。現職の大統領と、家族を皆殺しにされた一般市民という2人の調査の軌跡をたどりながら悲劇の背景に迫る」

ミッテラン大統領のフランス政府が虐殺を行っていた当時のルワンダ政府を支援、武器供与。(AFP伝)
http://www.afpbb.com/article/war-unrest/2680323/5132017