『TOKKO −特攻−』(2007)

●日系アメリカ人のリサ・モリモトという女性が監督した映画ということで以前から気にはなっていた一作。

●映画というよりもドキュメンタリー・フィルム

●神風特攻隊の映像をこれまでほとんど観てきていないせいもあるのだろうが、この作品の中で使われている飛行機が次々に撃ち落とされて行く映像。無数の砲撃弾の光りの中を戦艦に向かって突っ込み、爆発しバラバラになって海に散っていく映像は初めて見るるものも多く胸が痛んだ。

●「ドキュメンタリーは演出された映画よりも心を惹き付ける」と思っていたのだが、なぜかこの作品は観ていて心が惹き付けられなかった。監督の視点、編集、音楽・・・色々なものがドキュメンタリーに余計な手を加えすぎているかのようで気持ちがなかなか映像に入っていかない。

●日本人にとって非常に心苦しい、痛みの歴史である特攻を扱った映画ではあるけれど・・・正直これは観ていて詰まらない一作であった。

●こういうことがあったのだという記録映画、ドキュメンタリーフィルムであればNHK特集などのほうがよほど気持ちを揺らされる。

●特攻隊で生き残った人のインタビューなど貴重な映像もあるけれど、これは作品としては失敗作であろう。重さのある真実の映像にあれこれ手を加えていじりすぎて、その重さが響かなくなってしまっているのだ。この映画は特攻という奇異な日本人の行為を単なる映画の素材として扱っているだけで心底これを深く見つめていたのではないのではないだろうか? 何か表面的な素材としてしか特攻を扱っていない気がする。だから訴えかけてこない。

●2008年9月20日にフジテレビで放映されたドラマ『なでしこ隊 〜秘密基地・知覧 少女だけが見た“特攻”…封印された23日間 ...』成海璃子(前田笙子役)を観ているが、この中で実際になでしこ隊として特攻に出る軍人を見送った方々のインタビュー映像があった。その悲痛な気持ち、悲しい思い出の話しのほうが特攻という歴史の忌々しい事実を知るには得るところが大きかった。