『ベッドタイム・ストーリー』

●Bedtime Story 子供を寝かしつける時に読んであげる物語・・・・昔ベッドタイム・ストーリーズという名前でちょっとエロチックな男と女の映画があったのですっかりその手のちょっと淫な男と女の物語かと思っていた。すっかり勘違い。普通に子供向けのお話。

アメリカでは昨年のクリスマス・シーズンに公開して大ヒットだったということだが・・・全然知らず。日本公開は春休みに合わせ、全て吹替え版というのは戦略としては真っ当でそうでもしなければこの手の作品は箸にも棒にもかからないものになっていたかもしれない。

●子供を寝かしつける時に聞かせるお話・・・・子守唄とかなら日本語の単語として存在するが、子守話なんていう言葉は日本には無い。本来子供が寝る前に親がお話をしてあげるという風習は西洋のものであり、日本には無かったということなのだろう。布団に入ったら早く寝なさいというのが日本的な躾だったのかもしれない。ベッドタイム・ストーリーという言葉に対する日本人としてのイメージが沸かなかったこと、映画の題も原題そのままで巧く訳す言葉が見つからなかったのだろう。自分もこの題からこれが子供向けのお話とは直には想起できなかった。

●それほどプロモーションが行われていたとは思えないのだが、劇場は子供達でいっぱいであった。春休みに家に居る子供を持て余した親が「映画でも見に行きなさい」と送りだし「ディズニーの映画だったら問題ないでしょう」とこの映画を観させて自分の時間を確保しようとしたのかもしれない。

●しかし、この「ベッドタイム・ストーリー」まるで意もせず観たわけだが、これが子供に夢を与えるディズニーの映画なのか?ディズニーの映画がこんな中身でいいのか?とかなり訝しく感じるものであった。

アダム・サンドラーというどちらかといえば下品、下ネタ系の芸人が主役であるし、話の内容もこれが子供向け?とは言い難いような大人向けのお色気ギャグやらシーンなどもあれこれ。子供に聞かせた話が現実になるというのはファンタジーとしていいのだが、その現実になった話が全部子供向けというよりも大人がちょろっと笑うようなギャグになっている。使われる音楽はなぜか80`sのナンバーばかり。ファルコの「ロック・ミー・アマデウス」やらジャーニーのバラードやらと、観ていて「一体この映画は本当に子供向けに作ったのか?」と仰け反るような内容だった。

●小さく可愛い子供や、目のまん丸の動物などが出てきて観ていた子供達はそこそこにはしゃいで楽しんでいたようではあるが、そこは作品の内容やストーリーとは関係ない部分で出てきたキャラクターや映像を楽しんでいたに過ぎない。このストーリーは子供の頭の中には入っていかないであろう。大人が見てもさして中身もなく、感動するようなものでもなく、なんだかたいしたことのないギャクだから暫くすれば頭の中から消えてしまうであろう。

●感動するわけでもなく、心に残るわけでもなく、なんでもないTV番組を時間つぶしにみたようなそんな作品かもしれない。

アメリカでのヒットは、それこそこの映画を子供向けと振り切らず、下ネタコメディアンを主役にしたり、ストーリーもギャグにしたり、音楽も古いロックにしたりと、大人が見ても少しは楽しめるような部分を入れたことによるだろう。

●この映画の作りは子供向けというのではなく、大人にも媚びている。子供も大人もどっちもそこそこに劇場に足を運ばせて金を落とさせようという魂胆(それをマーケティングという場合もあるが)で作られたあざとい作品と感じた。

●子供に夢を与え、情操教育にも役立つ、そんなディズニーがこんな映画を作っていいの?と思ってしまう。親はディズニーだからと安心して観に行ったらなんだかちょっと違うんじゃないの?と思う人も居るだろう。

●この映画は子供向けとして日本で公開されてはいるけれど、ディズニーらしからぬ、ディズニーがこんな映画作って子供に見せていていいの?と思うような作品である。

●親と子供にとってはディズニーは世界標準、最大安心の子供のためのブランドなのだが、そのディズニーがコントロールする映像やキャラクターによって形成される子供の感性なんてものが世界に蔓延したら・・・ある意味それも企業の利潤かき集めの洗脳教育に世界中の子供と親が浸されているとも言えるかもしれないなぁ。