『226』(1986)

●DVDのセル・マーケットも低迷し、ブルーレイへの移行が始まった2009年2月25日。ようやくこの時期になって「226」がDVDになって発売される。製作から既に20年以上の歳月が流れた。

●日本史上最後に行なわれたクーデター。日本にクーデターがあったなんてことを想像する人は今どれくらいいることだろう。明治維新もクーデターであり、終戦間際にもクーデターに発展する所まで行く事件も起きた。昭和維新を求めた軍部の青年将校達、政治家が奢り、特権階級として私服を肥やし、おのれらだけが豊かで幸せな暮らしを享受している。しかし民衆は食うものにも困りはて、貧困の極み。そんな中で起きたクーデター。こんな政治と社会組織をぶち壊し新たな人民のための国を作り直そうとした。しかし、それは失敗に終わった。平成の今の世の中も状況は似ている。私服を肥やす政治家。自分達の都合の良いように法律を変え、制度を変え、税金を引き上げ、役人は税金で己の懐を潤おし、利得を貪り食っている。政治腐敗甚だしい今の日本は平成維新というクーデターが起こってもおかしくない状況ではないか。

●この手の政治色に絡んだ歴史作品は上映反対運動やらビデオ発売阻止運動などが起きる。本などなら一つの意見として容認されることであるのに。それだけ映画は多くの人の目に触れ、影響力も大きいということなのだ。この作品がこれまでDVD化されなかったことにもそういったことが原因としてあるのであろう。

五社英雄はこの映画を事実の追従というスタイルで作った。政治の側も、軍隊の側も批判も賞賛もせず、思想性といったものも極力排除して、あくまでこういった事件が、青年将校たちによって行なわれたのだという事実だけをカメラで捉えている。どこにも、どちらの側にも依らず2時間の映画を淡々と、しかし熱くフィルムに収めている。これだけの大事件があっさりとさらさら流れていくようでもあるのだが、妙な偏りのないこの映画こそが、観た者に何かを考えさせ、何かを残す事になるのかもしれない。

●こういった歴史を取り上げた映画が最近は少ない。製作する側も興行の側も「触らぬ神に祟りなし」としているようだ。

●雪未だ降りやまず、雪はよごれていた・・・・・映画はもっと歴史を扱い、歴史を多くの人に知らしめる役を担うべきだと考える。

●「動乱」「日本の一番長い日」「軍閥」など既にDVD化されている作品もあるが、東条英機を取り上げた「プライド 運命の瞬間」はいまだにDVD化されていない。話題造りばかりが先行し、金の回収だけが目的というような浅薄な新作を見ているよりは、過去の力作を見ているほうが余程いい。そう思える最近である。