『エニグマ』(2001)

ロバート・ハリス『暗号機エニグマへの挑戦』の映画化。

●太めで丸眼鏡を掛けて、いかにもオタク系女史といったケイト・ウィンスレットの役、人物設定がなかなか面白い。

●失踪した恋人に関する謎解きは説明をしているだけであり、驚きは少なく白ける。

●イギリスがドイツ軍のエニグマ暗号を解読している中でスターリン政権下のソ連ポーランド将校を大量に虐殺していた『カティンの森』事件を知ってしまうというくだり。大戦中、同盟連合国として対ドイツで手を結んでいたソ連の非道行為を知りながらもイギリスはそれを知らぬ振りをしつづけた。ロバート・ハリスの小説にはこのイギリスに対する批判、告発がもっと色濃く書き綴られているらしい。

●映画はUボート、ドイツ、スパイ合戦、暗号解読、ラブストーリーといった娯楽性を面に出しているため『カティンの森』事件に関する批判や告発的色合いは薄い。

参照:映画『エニグマ』とポーランド   
http://www.polinfojp.com/kansai/keraw30.htm
   日ポ協会関西センター『WISLA』第30号2003年9月31日発行

●映画としては前半は非常に退屈であるし、後半の謎解きも浅はか。ストーリーに奥深さは無く、実際に大戦の中でエニグマ解読でドイツに対峙していたという緊張感もない。男と女の情を絡めた軽いスパイ物娯楽映画とするよりも、本格的に史実に近づけた社会性と批判性を持った映画に仕上げていれば名作になったかもしれないのだが。

●クレアを演ずるサフロン・バロウズは美人。『イングロリアス・バスターズ』に出ていた女性スパイと顔付きが重なったが、別人。

●製作にミック・ジャガーが関わっているのがスカスカの軽い映画になってしまった原因か?