『K-20 怪人二十面相・伝』

●あまりパッとしない、華の無い今年の年末興行の中では少しはマトモかと期待もしていたが、思った程ではなかった。ガッカリするような酷さはないが、そこそこに上手くまとまっていてこじんまりとした普通の映画になってしまっている感じだ。
年末の話題作というほどの派手さや驚きはなかった。

●『ALWAYS 三丁目の夕日』と製作会社、スタッフが同じだから、確かにCGIの絵はなかなか巧くなっている。作りものとは分るがさほどに違和感はない。「三丁目の夕日」と風景はちょっと笑ってしまう位似ているけれど。

松たか子は明治、大正的な雰囲気のある顔立ちだから、時代設定には合っている。ちょっとこういう役の演技となると違和感を感じるものもあったが・・・お上品な世間知らずの貴族という感じではないのだ。

仲村トオルはベストなキャスティング。顔つきがキャラに合っている。金城武はどうかな、こういうふわふわした頼りなさのある強すぎない迷いを持った役ということでは適していたかもしれないが、魅力的かというと疑問。そういう意味ではこの映画のキャラクター、どれも今一つ魅力的というほどではない。演技の味わいでは源治役の國村隼がピカイチであったし、魅力的でもあった。妻菊子役の高島礼子もイイ感じだ。明智小五郎をサポートする小林少年(本郷奏多)もなかなか目立っていた。

●誰が見ても「Vフォー・ヴェンデッタ」をまんま思い出させる怪人二十面相のマスクは大チョンボ。こういうことはやっては行けない、仮にギャグだとしても。

●アクションシーンはなかなか、スピードもあるしワイヤーで引っ張ってるような不自然さもなし。

●2時間20分近い尺はやはり長すぎ。割と演出がよいから苦痛に感じるほどではなかったが、やはり時計が気になった。

●全体としては破綻もないし、絵もソコソコ良いし、話の展開もソコソコだし・・・つまり全部ソコソコ。

●失敗作ではないと思うのだが、見終わってスカッとしたものもない。極々平均点にまとめられた話となっている。画面を観ていれば邦画としては結構金が掛かっているだろうなと思えるのだが、それだけの金をかけて年末にぶつけてきた作品なのに、ここぞという場面が無い。思いきってドーンを観客を驚かせるようなシーンが無い。中庸に収まりすぎている感じで「なんかこんなものか」と物足りなさを感じてしまう一本であった。

●予告編で本編の中の良いシーン、目立つシーンをそれこそ最初から最後の方まで抜いちゃってるというのは考えものだろう。ポスターもこれでは「Vフォー・ヴェンデッタ」をリバイバル上映してるの?と思ってしまう出来。「銀色のシーズン」もそうだったけど、なんだかロボットの映画ポスターは出来がイマイチ。

怪人二十面相をK-20、しかもトゥエンティーなんて言い換える必要があったのだろうか? K-19という映画はあったけれど、なにもトゥエンティーと言わなくても。怪人二十面相じゃ古めかしく、観客の年齢層が高くなってしまうから、若年層を呼ぶためにこうしたのだろうか? そういう意味では当っているかもしれないが、劇中ではケーニーマルといってるんだから統一性無し。宣伝のしやすさではケイトゥエンティーとしたほうが確かに言いやすいし、CMも作りやすいとは思うけれど。

●ダークヒーローなんて言われてるけど、全然ダークじゃないね、しょうがなくなりゆきでそうなっただけという感じだ。「ダークナイト」のバットマンの様に自らがチョイスしたわけではない。これでシリーズ化は厳しいと思うが?

●脇役の名優、神戸 浩がこの映画の役では結構目立っていた。