『エリザベス ゴールデン・エイジ』

●相も変わらずというか、非常に良い意味でケイト・ブランシェットの演技が凄い。ほんのちょっとした目の動き、手や肩の動きでも感情を表現しているのが分るからうーんと唸ってしまう。

●最初にケイト・ブランシェットを見たときは、目を見張るような美人女優ではないし、顔つきも骨っぽく女性的とも思えず、レズビアン的な雰囲気も感じ、この人どうなのだろうなぁ?と思っていたのだが、ロード・オブ・ザ・リングでの気品あるガラドリエル役辺りからなんかこの女優は凄いなと思えてきた。それまでどの役で見ていてもこの険しい目つきと線の固い顔つきで、女性というより中性的なイメージでもあった。そのイメージが良い方向に捉えられ、女優としての技量も円熟し(まだそういった歳でもないのだが)段々とこれは大物、凄いと思わせる女優になっていった。

●演技力の凄さに気品までも融合させ、近ごろではトップクラスの女優と言って良いだろう。妙に軽々しいところもないし。インディ・ジョーンズでの演技も凄かったねぇ。

●最近は洋画を家で見るときは日本語吹替えで見ることが多い。字幕よりも圧倒的に言葉の情報量が多いし、それこそロード・オブ・ザ・リングなどは日本語吹替えの方が話も分かりやすく物語をより深く理解できた。それ以外の一応見ておくかという洋画の場合は日本語吹替えの方が言葉が頭に耳から入ってくるから気楽に見ていられるという所もある。

●しかし、この『エリザベス ゴールデン・エイジ』に於ては、オリジナルの英語音声で観た。それはケイト・ブランシェットの演技をじっくりと堪能したいからだ。日本語の吹替えではやはり実際の役者の演技とはちょっと違ったものに見えてしまう。熟成された素晴らしきケイト・ブランシェットの演技を堪能するにはやはり彼女の言葉、喋り方も含めて、生の声で観ることにより演技全部を味わいたいと思ったのである。それほどまでに彼女の演技は凄い。今こういうふうに思える女優は映画の世界広しと言えども非常に少ない。ケイト・ブランシェットは顔だとかタイプとかではないのだけど、卓抜したこの演技にもう惚れ込んでしまった。

●2時間の枠に歴史上のこれだけのストーリーを入れるのはもともと無理だが、よくぞこれほど巧く2時間にまとめたものだ。確かに端折っている部分は感じなくもないが、スペインの無敵艦隊を敗走させるまでを思いきりダイナミックに演出しているので観ていて話として破綻は感じない。

●当該国の人にとっては頭に入っている史話だとして、英国史キリスト教史などを学んでいないと分かりにくい部分もある。だが、それを差し引いても歴史の一大物語を充分に堪能出来る見事な完成度である。

●偉大なるイギリス女王だが、馬に乗っているシーンはなんだかどしっとした安定感がなく、馬にあちこちふりまわされいるかのようでちょっと心もとない印象だった。流石の名女優ケイト・ブランシェットでも馬を自分の意のままにコントロールするところまでは力が及ばなかったか?

●それにしても見応えのある一本。やはり歴史物は面白い。こういう映画なら3時間尺でもいいのだけれどね。もっとたっぷり史実の面白さを味わいたいし。