『守護神』

●単純明快であること。小難しいことを語らず、一本の真理を貫いていること。家族愛、夫婦愛、兄弟愛、師弟愛・・・愛を謳っていること。妙にあざとらしくストーリーを捻くっていないこと。素直に感情移入出来る素直なキャラクター。あーだーこーだー言わずとも、観終えて一言「良かったね」と言える作品であること。

●昔のハリウッド映画はこんな作品だった。家族で、恋人同士で週末の夜、映画館で、ドライブインシアターで娯楽として観に行き、娯楽として純粋、単純明快に楽しめる作品。それこそがハリウッド・エンターテイメントだった。

●余りにも話しを捻くり回し、観客に受けることばかりを考え、計算し、CGIだらけで今までとは違った絵を作ることばかりに執着し話しがボロボロだったり、ここ最近のハリウッドの映画はどんどんそういった傾向を顕著にしていき、どんどんと詰まらなくなっていった。そういった今のハリウッド映画の流れの中からみれば、この「守護神」は昔懐かしきハリウッド映画の姿を思い出させてくれるような作品である。

●「守護神」のストーリーは良くあるもの、これまでにも同じような映画は多々作られているので在り来たりではある。例えば「愛と青春の旅立ち」とは話しの流れが殆ど似通っているし、鬼教官のシゴキとそこで耐える若者、そして恋なんていうのはこの手の映画の常道で目新しさが有るわけでもない。だが、この映画は金の掛け方が半端じゃないし、海難救助のヘリコプターや大波荒れ狂う海のシーンはスペクタクルとして迫力が凄い。その点で良くあるストーリーなのだが、観ていて面白さが違う。

●日本の「海猿」のパクリと言われてどうも良い評価を受けない作品になっているようだが(実際パクリだろうと思うが)映画としての質、エンターテイメント作品としての面白さ、本来のハリウッド的娯楽作品としての在り方という点でかなり上級の作品と言って良いだろう。おしむらくは2時間20分という長尺。作品途中の訓練シーンなどは見応えもあるし、他のどのシーンも一定以上のクオリティーで下らないシーンは余り無いのだが、きっちり編集してこの1時間45分、せめて2時間以内に尺を納めていれば、それこそ本当にハリウッド・エンターテイメント作品の王道に位置することのできる良作となっていただろう。パクリの件も含めて作品の評価が低めなのが残念というか失態とも言える。

●観て損の無い作品。海難救助シーンの迫力も満天。「ボディーガード」以降どうも悪評散々なケビン・コスナーもこの作品の中ではしっかりとした名演をしている。彼あってこその作品の引き締まり方が生まれている。

●余りの長さは失態と言いきるが、ハリウッドに昔あったような本来的娯楽性を備え小難しいことを言わず、うざったい社会風刺もなく、単純に観て楽しめる作品としてこれは非常に良い出来の一本である。