『イキガミ』

●作品としての出来はなかなか見事であったが、暗く、重いストーリーである。「お国の為に」なんて言葉が邦画の戦争物以外で使われるとは想像したくなかったが、もしまたこんな言葉が平然と人々の口から出てくるような国になったら? 思うだけでゾッとする。

●話しが非常に上手く出来ている。監督も脚本も、まだ駆け出しのような人たちなのだが、この脚本は非常にきっちり作られている。破綻はほぼ無し。原作マンガがあったからだとも言えるが、ストーリーが非常に良い。

山田孝之成海璃子が演ずる兄弟のストーリーは秀逸。このストーリーだけでも純愛映画が一本書けそうなくらい良いストーリーだ。成海が演ずる妹役も良い。この二人の兄弟愛のエピソードはこの映画の中で最も美しく、心を揺らす素晴らしさがある。実際泣けた。

●キャスティングも実にイイ。松田翔太の冷たいイメージはイキガミの配達人という役柄に見事にはまっている。外見のイメージに反して、感情の部分ではクールではなく、国家繁栄法に対する疑問と怒りを熱く胸に秘めているところがまた良し。

●石井課長の笹野高史、女医の井川遥、参事官の柄本明ストリートミュージシャン金井勇太塚本高史、どれもこれも役を体現し、作品に深みを出す見事なキャスティングだ。(劇団ひとりの島田と風吹ジュンの国会議員だけがちょっとズレてるとは思うが。)

●モノレールゆりかもめの窓から撮影した曲がりくねった懸垂式の線路が、空から覆いかぶさるように、無機質なセメントの帯がくねくねと蛇行している映像。普段見慣れぬこの光景が、未来都市のイメージと圧迫された社会、広がる不安感を巧く表現している。タルコフスキーが「惑星ソラリス」で首都高の映像を使用したのと同じ表現手法。

瀧本智行監督はアンドリュー・ニコルの『ガタカ』(1997)をかなり手本としてこの映画のイメージを作っているように思う。ネクタイとスーツで通常のビジネスマンのような格好した厚生保健省のエリート、オールバックの髪、PCの画面がずらりと並び、単一色のスーツを着た若い職員が仕事をする部屋、国家繁栄法に疑問を持ち始める藤本に「その時が来るまで耐えろ」とつぶやく石井課長。それらのイメージは「ガタカ」の登場人物やシーンに重なる。

●誰しもが疑問に思う異常な法律を誰しもが意義を唱えず受け入れている社会。第一次、第二次大戦期の日本と似た、国家統制とそれを受け入れてしまっている日本人。作品は人間の尊厳を奪う法律の在り方にまでは話しを進めてはいない。悪法を管理する体制側の下僕かと思われた石井課長の言葉がかすかな希望を残す。

●実際にはこんなことは有り得ないと思いつつも、戦時中の日本の軍国主義天皇=神としての教育が徹底された皇国史観、お国の為には自らの命も捧げるのが日本人だと教育され続け、国全体が一斉に右向け右をし、国家の非を唱えた物は思想犯として投獄される。そんな時代が僅か数十年前までこの国には確かに存在していたのだと思うと、国家繁栄法などという法律が仮に出来たとしたら、日本人は抗うことを諦め、仕方ないと従順に受入れてしまうかもしれない。日本と いう国と日本人という民族は、そういう性質も持っているのかもしれない。そういった意味ではこの映画は意識の無い者たちが見た場合、示唆的な役割を持つだろう。

●フィクションとして発展させるなら、こんな法律をぶち壊す為、体に埋め込まれたカプセルを爆発させずに取り除くとか無効力にする地下組織なんてのが出てきて、イキガミを受け取った人を24時間以内に助け、アンダーグラウンドで国家と張合うなんていうのでも良かったかも?

◎もう誰しもが知っているこの「イキガミ」という作品と星新一作「生活維持省」の類似性,盗作問題。自分は「イキガミ」は明らかに「生活維持省」を原案、ベースとして作られたものであろうと思っている。星新一氏の娘である星マリナさんの質問に対して、出版社は「似ているというが、違うところもある」などとおかしな反論を堂々と発表している。似ているところが問題なのであって、違うところもありますから盗作ではありませんなどと、小学生以下の言い逃れにも等しい。

◎類似性の指摘は2005年に間瀬元朗氏が少年週刊誌にマンガを掲載した時点で日本文藝家協会が行っていたという。それが2008年に映画化が決定してからも出版サイドは明確な結論は出さず、星マリナさんからの新たな指摘を受けてあわてふためいて対応していると見受けられる。その後は掲載誌であったヤングサンデーが突然の休刊。(編集部の責任の所在を抹消するために「ヤングサンデー」そのものを抹消し、掲載に関わった編集部そのものも潰したというまことしやかな憶測が流れているが??)事実「ヤングサンデー」で連載していた人気漫画は「イキガミ」も含めてそのまま同社の他紙に連載を移している。(サンデーを潰す必然性はなかった?)

◎巨大資本のウォルト・ディズニーは「ライオンキング」が手塚治の「ジャングル大帝」の盗作とされたとき、平然と否定し続けた。(自分は明らかな盗作と考える)ハリウッドのスタジオがこの手の盗作訴訟を受けることは度々ある。だがスタジオは高名なエンターテイメント弁護士を使い、長大な反論文を原告に送り、回答を要求する。それに答えられなければ訴訟は受けないとする。仮に99%盗作が明らかだとしても、次から次へと嫌がらせのごとく法的な質問、こじつけの逆訴訟などを行い、自分達に匹敵するほどの資金力と組織力が無い者では到底対抗できないという状況を作り、訴訟を諦めざるを得ない状態とする。それが彼らの”法律に則った違法処理”なのだ。手塚プロダクションウォルト・ディズニー社に対する盗作主張の鉾を収めてしまった。これ以上争っても勝ち目もなく、自分達が疲弊するだけであるということが明らかであったからだろう。こうして原作者の権利は、守銭奴のハリウッドと、法律に則った合法的悪用によってないがしろにされた。人間が作った法律を盾にし、利用し、人間の道徳、社会のモラルを押し潰す典型的な例だ。

◎今回の星マリナさんの主張も、星新一氏の著作権も同じように、企業の狡さに踏みにじられている。「イキガミ」の「生活維持省」盗作問題に於ける出版社側の態度は、まさにハリウッド流の手法を使った”法律に則った法律の悪用"と言えるだろう。

◎こんな愚かな茶番を堂々と行なうことは実におぞましいことであり、願わくば「イキガミ」の作者に事の真実をはっきりと語ってほしいと思う。マンガは人気となり、雑誌は良く売れ、単行本も売れれば、多大なお金が流れ込む。ビジネスとしてはそれもいいだろう。だが、ものを創り、生み出す側の人間として、自責の念はないのだろうか? それとも口止めされているのだろうか? 生きていくには稼がなければならない。しかし、どれだけ作品が売れようとも、一度付いた盗作問題の汚名は消えない。作品と作者はなによりも大切な名誉というものを、栄光と称賛をも失ってしまったのだ。この先ずっと「イキガミ」には盗作問題が染み付いた腐臭のように付きまとい、拭うことが出来ないのだから。

『夢は天才である』(黒澤明文藝春秋編)の中で書かれているが、ジョージ・ルーカスと昼食をしたときにルーカスが「SWのロボットの役回りは『隠し砦の三悪人』からいただいたんです」と言ったという。ウイリアム・フリードキンは「フレンチ・コネクションの地下鉄のシーンは『天国と地獄』からいただきました」と言ったという。
これに対して黒澤は「そこからヒントを得たからと正直に言う。気持ちいいよね」としている。「でも日本の場合はそっくりなのを撮ってもそうはならないよね『赤ひげ』をテレビ・ドラマでやったら主役の俳優が「赤ひげ見てないもの俺はなんともねぇ」ってそういう言い方をする。不自然なんだよね。だって(そっくりなのに)ひとっつも挨拶なんてないよ。別に文句つけるつもりなんてないよ、ただひとこと「あれを拝借しました」っていってくれりゃいいんだけどねぇ。それも言わないで「へぇー似てますか」「しかし私たちは『赤ひげ』見てません」みたいなことを言うからさぁ、ちょっと腹立つんだよ。・・・と言っている。
まさにその通りなのだ、イキガミも。

◎「イキガミ」を発表する前に、たった一言「この作品は星新一先生の『生活維持省』を参考にさせていただきました」と言えば何も問題は起こらなかった。作品の冒頭にエピグラフを一文入れるだけでもよかった。ビジネスでも同じだ、ミスをしたらなるべく早く謝る事が大事だ。それを後回しにすると事がどんどん荒れてゆく、場合によっては最初の一言の謝罪がなかったために取り返しの付かないほど大きな問題になったりもする。まあ、誰かが喋らなければ真実は分らないが。一番に本当の事を知っているのは「イキガミ」を書いた原作者だ。今からだって遅くはない、作品を発表するときに言えなかった一言を言ってくれれば、こんな盗作問題なんて終わるのに。

◎映画「イキガミ」は作品としてはなかなか見事で優れた邦画である。これならば海外で公開しても良い評価を受けるのではないかと思った。しかし、星新一作品の盗作という問題がこうやってうやむやに誤魔化されている限り、どれだけ多くの人が見、どれだけヒットし、どれだけお金を稼いだとしても、この映画に名誉、栄光、賞賛は絶対に訪れることはない。そういった意味では国家繁栄法と同じく、この映画はいつまでも汚名と共にしか存在しえない、悲しき作品になってしまったのだ。それは原作者にもあてはまる。

星新一公式サイト 漫画「イキガミ」について 2008年9月19日 星マリナ
http://hoshishinichi.com/ikigami/index.html

☆星マリナさんの『イキガミ』に対するお尋ねについて 2008年9月18日 小学館
http://hoshishinichi.com/ikigami/shogakukan.html

漫棚通信ブログ版  September14,2008 『イキガミ』と『生活維持省』について
http://mandanatsusin.cocolog-nifty.com/blog/2008/09/post-5e03.html

☆人気ミステリ作家が徹底検証!『イキガミ』盗作騒動の罪
http://www.excite.co.jp/News/society_g/20081017/Cyzo_200810_post_1035.html?_p=1

△2010/11 映画公開から二年経過したが、今になって星新一氏の『生活維持省』こそロバート・シルヴァーバーグの「生と死の支配者」の盗作だとあちこちのブログにコメントを付けシコシコとネット上で流布活動している奇妙な人物がいるらしい。(呆)このブログにもやってきて定期的に「イキガミ星新一作品とは別物だ、星新一こそがシルヴァーバーグの作品を盗作している」「このブログに書いている誹謗中傷は多額の賠償になる」とバカな脅しと誹謗中傷を書き込んでいる。誹謗中傷を警告しながら誹謗中傷しているのだから頭が痛い。どこの世界にもおかしな頭の人物はいるものだ。他人のブログにコメントを付けて流布活動をするよりも、自分のブログでもつくってそこで徹底的に自分の論を展開すればいいではないかと思うのだが、それをしないのは何らかの関係者か、星氏に因縁を持つものなのか? 

何かつまらぬ理由でもあるのだろうが、他人のブログにコメントを付けまわって流布活動をしている程度では己の主張などどこにも誰にも受け入れられまい。奇異としか言いようがない。

付けてきたコメントの文章、主張、内容、書き方が wikiイキガミ:ノートで盗作問題に反論している利用者とそっくり、というか全く同じことを書いている。コメント主のIPアドレスもchubu telecomドメインwikiのノートで盗作に反論している利用者と同じである。(笑)あちこちのブログには“ななし”という名前で「イキガミ」こそロバート・シルヴァーバーグ生と死の支配者」のパクリだと流布活動をしている暇人もいる。 まあ、くだらぬ痴人のコメントなどすぐにゴミ箱に捨てるだけだが。溜め息
(-。-;)

痴人がイキガミwikiノートやコメント欄に残しているIPアドレス。全部名古屋。
124.18.204.129 chubu.telecom
219.117.42.226 chubu.telecom
180-199-134-47.nagoya1.commufa.jp

2011/7/15
・あちこちのブログに「イキガミロバート・シルヴァーバーグ生と死の支配者』のパクリだ」と書き込み、星マリナさんに対する誹謗中傷までを執拗に繰り返し続けている“ななし”という変質者が、まだゴキブリのようにうごめいているらしい。ここまで粘着していると異常な変質者というより、後一歩で犯罪でもするキチガイではなかろうか?

このブログにもたびたびやって来てコメント欄に誹謗中傷を書き込んでいる。一読して呆れ笑いをして直ぐに削除しているのだが、その”ななし”と思われる異常者が今度はこのブログ記事が一方的な誹謗中傷、名誉棄損だとして、はてな社に対して削除申し立てを行ったらしい。(呆れる)

精神異常の変質粘着人間もここまでくるともう犯罪者スレスレ「もう結構ですから関わりになりたくないんです、気持ち悪い人とは」と伝えたくてはてな社に対して以下の質問を行った。

はてな社は当ブログ記事の削除を求めるのであれば「誹謗中傷、名誉棄損されているという、このブログが指摘している“ななし”なる匿名の変質者と、削除申告を行った者が同一人物であり、このブログで名を上げている“ななし”なる人物と削除申告者の関係を明らかにし、削除申告者に誹謗中傷を受けた当該人物であるとされる人格権があることを証明し、また同時に削除申告者の住所氏名を公表していただけないでしょうか、それが筋というものですよ。当該人物以外が誹謗中傷だと言ってるのはおかしいでしょう、誰が被害を申告しているのかをハッキリさせてください」と。

・すると機を同じくして“ななし”と同一人物と思われる者が“削除依頼者”と称して再びコメント欄に誹謗中傷の書き込み。しかも「何度でも削除依頼する」と書いてきた。www もう完全にこの人物は変質犯罪者、異常者であろう。

結局のところはてな社はこのブログに私が書いている“ななし”の行為があちこちの書き込みから間違いのない事実であり、削除依頼は却下いたします、ご面倒おかけしました。という判断をした。

はてな社には削除申告者の住所氏名が記録されているので、これ以上おかしなことをするようなら逆に脅迫、恫喝、名誉棄損としてこちらから申告者の住所氏名の開示請求をしようかと考えているところ。www

・それにしても映画公開から、3年も経ったというのに、こういう動きをいまだに続けているということは、なんとかしてイキガミ=盗作パクリという文をネット上から消したいのだろう。ここまでしつこいとイキガミ作者との何らかの関係者ではないかと思う。そういえばイキガミ作者の故郷も名古屋である。(-.-;)

・しかし、イキガミ生活維持省の盗作という話がもうこれだけ広まってしまった今となっては、こそこそネットの書き込みやブログにイチャモン付ける活動をしていても、無駄な足掻きでしかあるまい。

・ちなみに検索:イキガミ 生活維持省 生と死の支配者⇒ななしの書き込みが出てくる。
(爆笑)
・やはりコレだけ粘着したしつこさを露呈しているのは、原作者のなんらかの関係者であろう。
・いいかげんにしてほしいところだ、まったく。(;-_-メ;)
参照
http://mago800.exblog.jp/8647119/
http://blog.shukosumida.com/?eid=23
http://mandanatsusin.cocolog-nifty.com/blog/2008/09/post-5e03.html