『グラン・ブルー/オリジナル版』(1998)

●フランスで1998年に「Le Grand Blue」作品公開10周年を記念してリバイバル公開された『10ans Le Grand Bleu/VERSION ORIGINALE』が日本でも同年6月にシネスイッチ銀座で『グラン・ブルー/オリジナル・バージョン』として公開されたバージョン。

●尺は132分。「グレート・ブルー」(120)よりも12分長く「グラン・ブルー/完全版(ロングバージョン)」(167)よりも35分短い。もともとは1988年にフランスで最初に公開されたバージョンと全く同じもの。

●無駄に長いだけの「グラン・ブルー/完全版(ロングバージョン)」とは違い、完成度の高い「グレート・ブルー」に12分のシーンを追加したもので、内容も「グレート・ブルー」に近くストイックであり、ロングバージョンにあった人間臭く生々しい部分はカットされているという。

●TVCMでちらりと映像を見たら、ジャックが海のなかでイルカと戯れるシーンで海の中にきらきらと星のようなものが輝いていて「グレート・ブルー」でも「グラン・ブルー/グレート・ブルー完全版」でも見たことのないシーンであったため興味をそそられたのだが「グラン・ブルー/グレート・ブルー完全版」があまりに酷い作品であったため、観にくべきかどうか迷っていた。(上記のシーンが本当にあるかどうかはまだ未確認。WEBで検索してもそういった情報は見つからないし、自分の見間違いかな?でもあの時TVで確かに今まで見たことのないシーンが流れていたと思うのだけれど)

●ちょうどその頃、シネスイッチ銀座で販売されていた96ページにも及ぶ分厚い本のような「グラン・ブルー/オリジナル・ヴァージョン」パンフレットを手にすることが出来、その中に「グラン・ブルー/グレート・ブルー完全版」(ロングバージョン)と「グラン・ブルー/オリジナル・ヴァージョン」の相違点についてという記述があった。

●「グラン・ブルー/グレート・ブルー完全版」(ロングバージョン)から削除された23のシーンについての解説を読んでいると35分のカットで大分無駄なシーンは削除されているようだったが、不快極まりない日本人をバカにしたシーンは残されているし「グレート・ブルー」に追加された12分のシーンだけを確認するためだけに観に行く気にもなれずこのバージョンは未鑑賞となっていた。

●監督であるリュック・ベッソンも最初に公開したこの132分の「グラン・ブルー/オリジナル・ヴァージョン」こそがディレクターズ・カット版であり、自分が考える決定版だと言っているようなので、本来であればこの「グラン・ブルー/オリジナル・ヴァージョン」こそがパッケージ・ソフト化され、多くの人が鑑賞出来るようにすべきであったはずなのに、劇場公開から22年も経過してなお日本でこのオリジナル・バージョンはソフト化されていない。監督がこれぞディレクターズ・カットだと言っているバージョンがソフトとしてリリースされないというのは由々しきことだ。

●だが、日本における配給権やソフトの販売権が移ったのだろう、ようやく2010年9月24日に角川ソフトからブルーレイでグラン・ブルー完全版(グレート・ブルーの表記はなくなった)とオリジナル版がリリースされるという。これでようやくオリジナル。バージョンがいつでも鑑賞できる状態になるというわけだ。(駄作であり不完全版ともいうべきロングバージョンを相変わらず「グラン・ブルー/完全版」と称して販売するのはいかがなものかと思うのだけれど。

●過去に一度作ってしまった間違えた遺物から抜け出すことは容易ではないということなのだろう。新しい販売元となった角川でも、”不完全版”というべきロングバージョンを他社が”完全版”として長い間販売してきた過去のしがらみと呪縛から抜け出すことは出来ないのだろう。

●似たようなケースではスター・ウォーズEP6「Return of the Jedi」の邦題を1983年公開時に「ジェダイの帰還」ではなく「ジェダイの復讐」としてしまったがため、その後2004年のDVD-BOX発売までの20年間ものあいだ、日本では誤ったままの「ジェダイの復讐」が使われ続けたという悪例がある。

●「グラン・ブルー/完全版」という名称もいつか修正されるのだろうか? 不完全なバージョンに付けられた、日本だけに存在する完全版という名称。愚かだ。

●角川がデジタル・リストアした「グラン・ブルー」のBDソフトを発売する前に、プロモーションの一環としてであろうが、『グラン・ブルー完全版−デジタル・レストア・バージョン−』が8月7日(土)角川シネマ新宿にて公開されるという。本来なら不完全な愚作である完全版(ややこしい言い方だ)を公開するのではなく、オリジナル・バージョンこそを公開すべきだと思うのだが。

●一番お気に入りの「グレート・ブルー」『THE BIG BLUE』国際版(120分)がデジタル・リストアされてBDで発売されたら迷うことなく購入するのだけれど、今回発売される完全版やオリジナル版のBDも劇場公開される映画も、あの観ていて不快になる日本人をバカにしたシーンが入っているので触手が伸びない。

グラン・ブルーDVD/BD公式ページhttp://www.legrandbleu.jp/index.html

2011-07-20 『グラン・ブルー/デジタル・レストア・バージョン』これは別の海だ

2010-07-05 『グレート・ブルー』 数あるバージョンの中でこれがベストだ。

2010-07-06 『グラン・ブルー/グレート・ブルー完全版』これは完全版ではない!

2010-07-07 『グラン・ブルー/オリジナル・バージョン』

2010-07-08 『THE BIG BLUE』思わずのけ反る程の改悪作品。

2010-07-09 『グラン・ブルーその後、夏の海、思い出』