『小さき勇者たち〜ガメラ〜』

ゴジラにしてもガメラにしても、なんでこう子供向けに作ってしまうんだろう? 

●小さき勇者たちって、夏帆が持っていた赤い石を手渡しでどんどん運んで行く子供たちのことなんだろうけど、動機が全く意味不明。なんでいきなり赤い石を渡されてガメラに持っていってなんて言われて、何も言わずに頷いて走り出すの? まだ年端も行かない子供が??? 頭を捻るしかない。なんという筋の通らぬストーリーを作るものだ。

●元々は、ある意味社会性を怪獣に投影したのがゴジラ第一作だったのに、怪獣物だからと子供向けにスタンスを変え、軒並み目も当てられない低レベルのお子様向け怪獣映画を作り続けてきたのが東宝大映ガメラも初期の大人の目に耐えられる作品がどんどんとと幼児化してしまい、それはもう子供ですらそっぽを向くような作品になっていった。

平成ガメラでなんとか大人が見ても満足出来る程のクオリティーを復活させたのだが。結局はまたこういう子供向けにもどしてしまうんだな。

●子供向けに作って親子で観てもらいたい・・・なんてのは偽りの言葉で、本当は少しでも興収を上げたいってのが本音。だけど、そうやって子供向けの作品を作ってしまって、さらに評価を下げ、興収もガタガタにというパターンを繰り返してきたことに映画会社はいつになったら気が付くのか? 日本の怪獣映画はずっと同じことをバカみたいに繰り返してきているというのに。

●子供向けといっても、この映画は余りにレベルが低すぎる。今時分の子供はもっとレベルの高いものを求めている。映画を見る目だってしっかり持っている。それなのに、こんなまるで子供すらもバカにしたような脚本では子供だってそっぽを向く。この内容では小学生以下の幼児しか受入れてもらえまい。

●製作陣は子供すらもバカにしている。子供向けとはこのレベルと思っているわけだ。たぶんもう頭が古いのだろう。子供はこんな映画、ストーリーを好むだろうと自分の子供の頃の記憶のままで映画を作っている。世の中も考え方も子供の意識も、その知識も何十年も経ったら変わっているのだというのにそのことにまるで気が付いていない。それはガメラゴジラも同じ。テレビの戦隊物やロボット物と同じような映画ということでは東映が一番優れている。キチンと子供向けにつくっているし、ストーリーも演出も子供むけだからって疎かにしていない、目は大人と同じレベルでキープしている。

●怪獣の造型もいかんともしがたい。この映画に出てくるジーダスという怪獣(名前も酷いな)、トカゲをイメージしたということだが、エメリッヒ版ゴジラにそっくりではないか! ガメラ映画でわざと似せたとは言うまい。もしホントに層だとしたらそのジョークは結構シニカルだけど。怪獣の造型にも新しさがなく、通り一遍等の怪獣化デザインをしたらゴジラに似てしまったのだろうか? これはペナルティーに値する。日本の怪獣物は「帰ってきたウルトラマン」辺りまでは怖くて斬新で新しいものだったけれど、それ以降はで魅力有る怪獣が一体も出てきていない。その辺にも力が入っていないのがありありと分る。

●ということで、またガメラはダメになった。これで暫く映画ファンはそっぽを向くだろう。いつになったらガメラゴジラも、その素材としての素晴らしさを生かした映画になることやら。