『キサラギ』

●ようやく観たが・・・・・こんなもんかい、別にぃ・・・・という感じか。

●脚本がイイとか言うが・・・・違うンじゃないの? 悪い脚本だというのではないが、これで脚本を絶賛しているのはどうなのだろう? この映画って最初から最後まで観ている人にくどくどと”説明”している映画なのだ。結論、結末が最初に用意されていて、そこに至る、その結末を証するためのあれやこれやの説明をずっと最初から最後までしている、見ている側はされているという作品であった。

●ダイナミズムだとか、ドライブ感だとかそういうものはなし、兎に角最初から最後まで”こうこう、こうで、こうなりました”と説明されている映画だ。

●映画も色々と見ていると、事前の宣伝、PRやキャスティング、監督、登場人物とストーリーのちょとした粗筋なんかだけで、これって面白そうだとか、なんか見たら失敗しそうだなとかそういうふうな先入観を働かせてしまう部分がある。(まあ誰しもそうだろうけど)。この映画もちょっと話しを聞いた段階で「なんか見たらがっかりしそうだな」というイメージがあってなかなか見る気になれなかった。もちろん、そういう先入観が激しく破られて大絶賛するほどイイ映画も沢山あるが、その先入観が当るか外れるかはほぼ8:2位で当る。これはホントに感の世界でしかないけれど。

●その感がこの作品は当ったな。やたらどこもかしこも評判が良すぎるのも「ホント?」という思いであった。

●個人的嗜好はもちろんだが、それほどまでに高い評価がなされる”映画”とは思えない。世の大衆がこれにそんなに高い評価を付けているなら、自分の映画の見方とはギャップがあるということか? まあそれも辛口批評としては面白いでしょう。

●それにしても不思議だ、駄作だ、愚作だなんて言うような酷い作品ではないが、小粒なまあまとまったよくある佳作のちょっと上という感じだろうけど。

●まあ、兎に角、演技だとか、演出だとかいう部分より、ここまで全編説明、説明というのが幅を利かせている映画というのもしんどい。ダメである。

●冒頭の映像は、なんだか新しい感じがして、これはひょっとしてイイ感じかなと期待させてくれたんだけれど。まあPVみたいなものかも。ピンクを多用したいかにもオタク向けといったロゴやデザインは、まあ受けはいいだろうね。コミカルだし。

小出恵介はこの映画の中じゃ、まるで少年マンガの突っ込みギャグをいうチョイ役という感じで、かなり邪魔だ。説明ばっかりのストーリーに少し抑揚を付ける役目はしているかもしれないが、余りにわざとらしい演技とセリフに、なんだか目障り感があった。小出恵介にこういう演技は向いていないじゃないか。ちょっと気弱なダメ男役の方が似合ってるし巧かった。

●ということで、最後まで行っても、あっそ!それで?・・・・・・ という感じであった。

●脚本の古沢良太は「ALWAYS 三丁目の夕日」のしっかりとした脚本を書いている人であるが、この「キサラギ」はなんか別物という感じ。ちょっとネットで調べてみたらオリジナルは舞台用のコメディーだということ。なるほど、舞台という狭い空間での言葉遊び的なものか?・・・・・ん、とそこで思った。やっぱりこれは舞台物なんだろうなと。映画的ではないなと。映画の中で舞台を見させられている違和感があるんだなと。(ザ・マジックアワー然り)

●演劇と映画は似て非なるもの、いや大きく違う。舞台とスクリーンはこれまた全然ちがう。それをまぜこぜにしてしまうと、違和感が浮きだしてくる。この映画に対する自分の印象はそこに起因している。これって映画用の話しじゃなく、演劇、舞台でやってることでしょう。映画にしてるから変なんだ、と・・・・・。(この感じはザ・マジックアワーで書いたこととほぼ同じ)

●多くの人が「これはいい」「素晴らしい」「見事な脚本だ」などと言ったり、書いたりしてるのを沢山見てるけど・・・ダメだねこれは。

香川照之塚地武雅の演技は流石!と言いたくなるプロ物。小栗、小出は・・・・まあ頑張ってるが、先の二人とは雲泥の差。ユースケ・サンタマリアもなかなか上手いけど、そろそろ演技がワンパターン化してきてるか?

●世間の高い評価に、遅ればせながらようやく観て、いちゃもんつけまくりというのも何だけど、この映画はイマ一つという感じである。

☆映画批評 by Lacroix