『ぐるりのこと』

●退屈であった。もうホントに途中で出たくなる映画だった。この手の作品は自分は受入れ難い。何が夫婦愛の形なんだろう? こんなダラダラと異常に長い映画もそうそうお目にかかれない。なにせ140分、2時間20とは・・・・。ウッディー・アレンを少しは見習ったらと言いたい。

●段々邦画も洋画も長くなる傾向がここんところあるけれど、それにしても長ければいいというものでないことは確か。どちらかと言えば長いのにロクなものはないというほうが経験上正しい。

●1990年台の様々な社会的衝撃のあった事件を夫婦の物語と並行して見せて行くというアイディアはこれまでに無いものだが・・・・アイディア止り。夫婦の話しとは乖離していて、なんでこういう映像をちょんちょん入れるの?と疑問になってくる。

法廷画家というのもこれまで映画やテレビでは殆ど扱われたことの無い世界で、興味を引くものではあるのだが、これもアイディア止り。話しが発展していかないではないか。

リリー・フランキーの起用は完全なる失敗と断言してしまおう。ひょうひょうとした風体は監督がイメージした夫の姿に近いのかもしれないが、リリー・フランキーの演技は演技になっていない。ボツボツと喋るのは本人の地に近いのであろうが、セリフを話しているときの顔、体のちょっとした動き、目つき、仕草、顔の歪めかた・・・もうそういう何もかもが何も無い。リリー・フランキーは唯セリフを喋っているだけである。セリフには若干の感情を込めて演技をしている風ではあるが、顔も体も手も足も、全く演技をしていない。下手というよりも、演技をさせる前の段階ではないの? そういうことをさせるという監督の意図も分らぬ。

●一万歩下がって、勝手に監督を擁護するとすれば、客寄せのキャスティングということでプロデューサーがリリー・フランキーを選んだのかもしれないが、監督はそこに異を唱えられなかったのかもしれないが。こんな木偶の坊の様な演技をする役者を作品のメインに使ったのではもうそれだけでオシマイでしょうと言いたい。

●どうしょうもない演技の上に、リリー・フランキーの男ケツを二回も見せられると、もう、不快感たっぷりである。

●それに引き替え木村多江の演技は見事であった。精神的に苦しんでる姿はひしひしとその苦しさが伝わってくるかのようなピリピリ感で目を離せなかった。胸にが詰まるような思いもした。

●美人なんだけど、ずっと不幸な境遇の役だとか、あんまりイイ役に恵まれてなかった万年脇役だったんだけど、ようやく主役の一人として今までの演技経験を存分に見せているという感じだ。自分が始めて木村多江を知ったのは「感染」の看護婦役でかな? あの役も暗くてしんどい役柄だったけどね。今回は40歳を前にして結構Hなセリフ、演技、そしてあとちょっとという所まで見せたお風呂場シーンなど、今までにない役と演技もやっている。

●元顔は美形なんだから、若くしてデビューしたときに、もう少し色っぽいことや、艶っぽいことにも挑戦出来ていたら男の注目はもっと集まっていたのかもしれないけど、まあ、40歳前でもキレイな人ではある。遅咲きがちょっともったいない感じだ。

●まあそういう色物の部分がなくても、しっかりとした演技を見せてくれていたから、この映画を見て唯一つの良かった点は木村多江ということになるか。

橋口亮輔監督の6年ぶりの作品ということで、以前かなり話題になっていた「ハッシュ」のことを思い出し、昔の記録を調べてみた。その頃はブログなんてなかったから、鑑賞した映画のことはパソコンに打ち込んで記録していたんだけどね。もうすっかり忘れていたけど、その時も「ハッシュ」を観て「なんでこんな映画が評判なんだろう? 主演の女性のあからさまな子供を作りたいという表現だけが目に付いてあとは全くつまらなく長く退屈」とか書いていた。

●映画は十人十色、橋口亮輔監督の作る映画はまるで波長が合いそうにないね。これも好き嫌いである。

●いやはや、なんにしても、この異常に長くダラダラとしたストーリー、繋がりを持って発展していかないエピソード。とにかくダメなリリーの演技。こういう映画はもう見なきゃよかった、時間の浪費と思って後悔したほどである。

●なんでも無いストーリーを紡いでいても「歩いても 歩いても」は心に染み入る感動があった。それに引き替えこの映画は・・・まったくダメであった。

追記:それにして、自分の批評とは反して、この映画はネットで見ただけでもあちこちで最高だ、素晴らしいと絶賛している声が圧倒的。ふうぅん、と思ってあちこちページを読んで、なるほどと思う部分と、そりゃ違うでしょと思う部分に色々と驚いたりしてる。映画をみるときの、世の中の大衆の感覚と自分の感覚に大夫違いがあるか?(笑)でもまあ、だからって思ったことをダイレクトに書いているワケだし、多数意見に影響なびくということもないけれど。