『気負わず、おごらず、立ち止まらず〜堤幸彦〜』 

●プロフェッショナル 仕事の流儀 NHK総合 放送時間:2008年5月13日(火)22:00−22:45
http://www.nhk.or.jp/professional/backnumber/080513/index.html

●黒澤だ、キューブリックポール・ハギスだと一部は監督で映画を選ぶこともあるが、基本的には映画は最終的な完成度。イイと言われる監督でもイイ作品もどうしょうもない作品もある。あたりまえのことではあるが。だから余り監督で作品を選ぶことはしない。見終えた後に、ああ、あの監督だったんだねと納得するという方が多い。

●特に今の邦画では、監督自体の批評というか、あれこれは言うが、この監督だから見ようなんてのは殆ど無い。唯一つ、自分にとってその例外が堤幸彦監督だ。

●TVの「金田一少年の事件簿」「ケイゾク」なども見たことが無かったし、「恋愛寫眞」「明日の記憶」はイマイチだったので監督の名前に注意が及ばなかった。堤幸彦という監督をいいなと思ったのは、やはり「包帯クラブ」からだ。「包帯クラブ」の独特の感性に、ようやくピピッと来たという所か?自分にとって「包帯クラブ」は2007年のベストでもあるし。

●それ以来、堤監督の作品は好んで見るようになった。非常に多作な監督である。というより、沢山の持込まれた映画監督依頼を、次から次へと受けているという感じだ。休む暇もないくらいに。

●そんな堤監督をNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」で取上げるという。これは見逃せないと思った。・・・・・しっかり録画した。

●番組を見て、ホントにこの人は真面目な人なんだろうなぁって思った。真面目すぎるくらい生真面目なんじゃないかなぁって。

●若いころ入社したプロダクションでは、全く使い物にならず、電柱とよばれていたという。その後、結婚した奥さんが病に倒れ、その入院費用と治療費を稼ぐため、なんでもやれることなら全部やった。朝から晩まで仕事をした。そういう話しを聞いて、今は大人気の監督だが、本当に苦しい時代があったんだなぁと思った。誰しもにそういう時代というものはあるのだろうけれどね。番組中では触れていなかったけど、その最愛の奥さんはやっぱり亡くなったのだろうか? 分らないけれど、そんな気がした。

●堤監督は、演技をしているその現場には立たず、離れた場所のモニターを見ながら指示を出す。黒澤、小津、小泉堯史監督なんかだったらそんな撮影方法を取っている監督なんて一刀両断に「そんなのが映画監督と言えるかぁ!」と言いそうだが、堤監督の「実際に観客が観るスクリーンを見ながら演出をしたい。直接演技の現場に立ってしまうと言いたいことが言え無くなるんだ」なんて発言はなんて素直なんだろう。堤流の撮影、監督手法は理解できるなぁ。100%じゃなくても自分も同じ様なことをするかも。小泉監督は逆にモニターを設置しないで映画を撮影するという。別種のやり方だよね、これは。テレビ的であるとかいえるかもしれないけど、合理的かもしれない。精神論的に魂が絵に篭らない、演出に伝わらない、役者に思いが伝わらない・・・なんてことも充分理解できるけれどね。

●現在50歳を過ぎた堤監督。インタビューの中では「あと10年だなぁ、焦るなぁ、早く自分の代表作といえるものを撮りたい」と言っていた。

●次から次へと持込まれる監督依頼を、少しは断って、自分の作品を作って欲しいと思う。自分で脚本を書いて、じっくりと一作と向きあって、ビジネスとして製造される映画ではなく、自分の生き方を映しだしたような映画、そういうものをそろそろ撮って欲しいとおもう。

●年間で監督してる作品の数だけ見ても、余りに多すぎると思うし。もうそろそろ、じっくりと一本を撮って欲しいな。