『クワイエットルームにようこそ』 

●テーマ曲がいいね(このテーマ曲って言い方はオカシイか? テーマを表してる訳ではないから、イメージ雰囲気を醸し出し、アップさせる曲だよなぁ)この唄はイイ感じ。《LOVES》というグループらしいが、全然しらない。というか最近映画のテーマ曲などに採用されるグループやアーティストって知らない人ばかりだ。だが、なかなか良いものを持っている連中が多い。それは凄いし映画に非常に効果的に使われていると嬉しくなるが、何故かココ暫く映画のテーマ曲からのビックヒットはないね? なぜだろう? テレビの主題歌、挿入歌からのヒットはまだあるが、映画からのヒットとかメジャーになるのってとんとお目にかかっていない。不思議である。何故だろう?

●結構グロイ、リアルに汚い。スナック摘みながら、ビール飲みながら見てたりすると気持ち悪くなる。

●一つ前に観たのが「自殺サークル」であったせいもあるが、画面の構成や、演技、カメラワークなどどれもこれも「んー、やっぱりこれは巧いな」とちょっと唸る部分あり。悲しいかな、その差を痛切に感じてしまった。

●この映画の蒼井優は相変わらず脇役ではあるが、良いスパイスになっている。今まで見たことの無いような格好、メイクをさせて、ぼんやりおっとり、癒し系だった蒼井をこういうとんがったキャラに調理するところは、さすがか、松尾スズキ

●その他のキャラクターもありきたりの言い方だが、ぜんぶキャラが立ちまくっている。ここまで来ると異常か?

クドカンも演技がうまいねぇ。しかも独特の味がある。

●りょうにしても大竹しのぶにしても・・・・まあ書いていたらきりがないが、全員が・・・すごい。ふーむと唸る。よくぞココまで個性派を集めた、いや一人ひとりの役者を個性派に仕立て上げたものだ。感服。

内田有紀は結婚、引退、離婚、カムバック後の初主演作品だが、ふっきれているというか、よくもここまでというくらダメで汚い(ジンマシンや嘔吐)ことをやるものだ。役者根性がすごいのか、スタッフに騙されたのか? だが、そんな役をやっていてもやはり美人の最後の一線は演技から滲んできているから最後まで落ちてはいないわけで、もうこれまたタイシタものですと頭が下がる思いである。

●細かく書くと面白いシーンや演出は山ほどあって、書ききれない。

●感動したわけではないし、それぞれのキャラクターがもつ悩みだとか苦しみに思いを寄せたということもない、仕事や恋愛に悩む主人公というのは少しは分るが、精神病院に集まる人たちの心の襞、苦しみというのは・・・出てないね。出してないのか? 

●ラストで、明日香(内田)が退院していく丁度その時、病院の入り口に救急車がきて、明日香の直ぐ脇を喚き叫ぶ旦那と一緒に担架で病人が院内に運ばれていく。シーツに覆われて顔は見えないのだけれど、観客は直ぐに気が付く、元気に「私はここにいる人じゃないから」と退院していった栗田(中村裕子)なんだと・・・・このシーンが一番グサッときた。全編通して、精神病や心の病、オーバードーズなどの重い話しをしていながらも、ほとんどギャグ、おちゃらけという感じでストーリーは進んできたのだが・・・ラストで、やはりここに居る人はそうではなかったのだとグッと重いものを背中に乗せられたような気分。それがあの一番元気で普通に見えていた栗田であるのだから。(この展開はちょっと予想ついていたが)

●テクニカルで実に面白い、ウイットにも飛んでいるしDVDを買って細かく見てみようかなんて気にもなるのだが、やはりゲロを顔にこびりついたあり、じん麻疹で赤くなった体だとか、ちょっとオエッ!と来るシーンが多いので、細かく見るのは躊躇ってしまうな。

●途中で内田有紀が上半身裸になるシーンがあるが(もち撮影は後ろから)おやまあ、くびれてスタイル良いねぇ流石にと思ってしまった。(笑)

黒澤明橋本忍らの映画を再見して著作をよんでいると、昔の映画人はもう魂を削るがごとく、真実をソノ瞬間をフィルムに切り取って再現して観客にみせてやろうと必死になっていたことを感じる。生半価に映画には取り組んでいない、本当に真剣勝負の厳しさで映画を作っていたなと。

◎だが、この映画は松尾スズキが自分の気の合った仲間や、面白い役者たちとホントに楽しんで作っているという感じだ(もちろん撮影では厳しいこともあっただろうが)映画への取り組みということで考えれば、かっての時代の監督や役者の在り方とはそれこそ天地がひっくりかえるほどの違いであろう。

◎こういった雰囲気で、楽しく映画を作るなんて事は有る意味羨ましくもある。それでなかなかの作品を作り出すのだからやはり才覚の違いであろう。

◎映画としては非常に異質な作品だと思うのだが・・・・・それもアリなのだろうなぁ。
 

★映画批評 by Lacroix