『アヒルと鴨のコインロッカー DVD』

●2007年7月6日の日記でこの映画に関しては感想を書いているが、昨年の作品の中では余りに出色の出来であるため、もう一度書きたくなった。
ちょうど発売されたばかりのDVDも届いたので再見したばかり。特典映像まで全部観るなんて滅多に無いことだ。もう全てが良いねぇ、この映画は。

●何と言ってもこの素晴らしい脚本を書き上げた、この作品の監督でもある中村義洋には最大限の称賛を送りたい。

●出演者三人も脚本を読んでストーリーを理解出来なかったと話している。何度か読んだり、絵を描いたりしてようやく分かってきたと。最後まで理解できないという人もいたらしい。確かに、これは脚本を書いた中村監督の頭の中での構築であり、文字だけでそれを理解するのは困難であっただろう。それが映像として全体を見たときに、初めてそのプロットの物凄さを理解出来る。

●こういった難解とも言える脚本は脚本家の腕の見せ所でも有る。「メメント」「マルホランド・ドライブ」の二つを引きあいに出すが、「アヒルと鴨のコインロッカー」はそれらを遥かに凌いだ脚本の妙ではないだろうか。

●こういった込み入った脚本の映画は何度か見ると巧妙に仕掛けられたセリフやシーンが後から分かって面白い。だからリピータを誘導しやすい。自分はこの映画は劇場で見てから2度目は足を運ばなかった。素晴らしさの余韻に浸っていたかったからだ。今DVDが届いて半年ぶりにこの映画を見ると、途中経過と結果が分かっているからこそ楽しめる部分が沢山有る。なるほどと思わせる撮影や、演出がことごとく憎たらしい位に巧く折り込まれていて泣けてくる。

●ラストで亡くなってしまった二人の声をボイスレコーダーで聞いていたドルジ。思い出を噛みしめるように笑顔を見せて録音されていた声を来ていたドルジ。そこに「風に吹かれて」を口ずさむ声が聞こえてくる・・・・驚いて顔を上げるドルジ・・・・神の声、それを待っていた。神の声がどうしていいのかわからなかったドルジの元に届いた・・・・・なんて素晴らしいストーリーなんだろう。

●2007年。邦画の歴史に残すべき作品である。

注意)何故かこのDVDにはチャプターが付いていない。厳密には付いていないではなく、ちゃんとチャプターで区切ってはあるが、チャプターリストがメニューの中に無い。だから自分が見たいシーンをセレクトして飛ぶということが出来ない。
今どきのDVDでなぜこんな作りをしてるのだろう? 順を追って見ないとそのストーリーの謎解きが出来ないから? わざとこういうふうにしてサスペンスのなぞ解きを最初に見れないようにした? んー考えにくいな、それは。
DVDの製作でミスしたとしか思えないし、チェックの段階で気が付いたけれどそのまま発売したということだろうか? ちょっとありえないな。