『ミッドナイトイーグル』 

●邦画史上最大スケールの山岳サスペンス・アクション誕生!・・・嘘でしょ。スケール感なんて全然ナシ。

●日本滅亡まで48時間・・・・・嘘でしょ、そんな緊迫感も、時間的なスリルも全く無いじゃない。

●山岳サスペンスとしての要素は殆ど生きていない。山を巡るサスペンス性なんてこの脚本のどこにあるというのだ?

●ポリティカルサスペンスとしての中身も殆どナシ。日本に潜伏していた工作員ってなんなのよ? そんなに簡単に数十人の工作員が冬のアルプスに集合出来るかっ?て言うの。

●墜落したミッドナイトイーグルに辿り着いた3人は工作員に取り囲まれて秘密の特殊爆弾を装着したミサイルを守りきれない、だからナパームをぶち込んでくれだって? 墜落機の近くまでヘリは来て、吹雪で着陸できないとしても墜落機の周りに機銃掃射するとか、ダイナマイトでも絨毯爆撃式に落とせば這いつくばって上ってきた工作員なんか吹き飛ばせるだろう。それがなんで為す術がないとなって、ナパームを打ち込めなんだ? なんでトマホークミサイルを墜落機にぶち込めなんんだ? 話がまるで通らない。というかこれでは見ているものがあきらかにおかしいじゃない? としらけてしまう。

●原作は読んでいないが、その辺り原作はもう少し筋の通った話の展開になっているのではないか?

●いろいろ努力したけどどうにもならない状態になってトマホークをぶちこめというのならなんとかなるが、なんら工作員からミサイルを守るような努力もせず、あっさりと、もうだめだから工作員ともども焼き払ってくれとは・・・・・もう呆れ返る。

●前半1時間以上がだらだらとアクション映画でもサスペンス映画でもなく、後半に持っていくための準備的な話を続けている。もう映画にスピード感も演出のダイナミックさもなにもない。

工作員の彼女は身篭っていて、普通の暮らしをしたかった・・・・・ってありきたりな取って付けたストーリーに興ざめ。

●まあそのほかにも突っつくところは数知れず、日本の総理にしても、自衛隊にしても、工作員にしても・・・・全部だめ。

●相当の製作費が掛かったということだが、山岳部での空中撮影、やヘリコプターなどの撮影機材に金が掛かったというだけで、本来あるべきアクション映画としての演出部分にはさして金を投じていないだろう。

小林武史ミスチル桜井の音楽も曲自体はいいなと思うのだけど、なにもこの映画で使う必要なんてないだろう。そんなことで注目を集め、製作費の一部(といってもかなり高額だろうが)を使うなら映画そのものにもっとお金を投じたらどうなのか? まあ、製作委員会にレコード会社や事務所も絡んでいるから、使わざるを得なかったというのかもしれないが。

●この映画は語っても語っても語りつくせぬくらい酷い。いやもう語る価値はないか?

●この年末シーズンのもっとも注目されるべき大作として話題性も高かったが・・・・・・コケるでしょう。

●公開一週間前にテレビスポットが結構流れていたが、そのCMが竹内結子が泣き崩れるシーン、玉木宏が死に行くシーンで作られていた。アクション映画、山岳サスペンス映画なのにそういった要素を全く取り込まず、主役の人気男女二人をCMに使って露出させる・・・ふん、少しでも人気女優、俳優を露出させて大して映画になんて興味がなくてもアイドルファンの観客動員を計ろうという魂胆がこのCMには見え見えだ。このCMが流れた時点で・・・ああ、やっぱりこの映画はだめだろうなと感じた。制作サイドもストーリーの貧弱さをなんとかカバーしようとこういう普通じゃないCMの作り方をしてなんとか少しでも動員を上げたいと思ったんだろう。

●オーソドックスでない特異なことをしている場合はその裏になにか妙なものがあることが多い。このCMは見事にそのパターンだ。

●ラストに大型スクリーンに映し出された父と子供、義理の妹の最後の会話が延々と続く・・・・どう見てもアルマゲドンのパクリでしょう。明らかに他の映画が想像されるようなストーリーと映像をしゃあしゃあと取り入れるのはジョークっぽいオマージュでも無いかぎり感覚としてどうなのか?

●まあそれでも最後の方は少し泣かされるけどね、そういうお涙頂戴の演出をダンダンダンと映しているから。まあだからってこの映画に感動するとか良かったなんてとても言えるものではない。

●またしても駄目映画が日本にひとつ産み落とされた。ユニバーサルも製作委員会に入っているが、これじゃぁ、世界配給で少しでも元をとろうという思いもお流れになったことだろう。