『BECK』(2010)

・そういえば去年少し(自分として)話題になっていたか? しかしどうせTV局の神輿担ぎで、自社製作映画の話題作りをしてるんだろうと、ちらっと横目で見ただけで通り過ぎていた。

・若い奴らが、自分をどう表現していいか分からなくて、悶々としていて、音楽やバンドやそこでつながる仲間との一体感に何か今まで知らなかった、なかったものを見出し、熱中していく。それもよくある例であり、若者の青春なんてものを描く典型的な手法でもある。

・しかし、この映画の若者やバンドには、そういった悶々とした悩みだとか苦しみが全然感じられなかった。映画の作りがコメディー路線に強く振ってあり、真面目に青春の悩みを描くというよりもギャグっぽく描いているから仕方ないとも言えるが、それにしてもなんだか詰まらない青春バンド物映画としか思えなかった。

・悶々としてなにか満たされない若者とバンドの姿を熱っぽく描いているとしたら『フィッシュストーリー』の逆鱗のほうが遙かに、圧倒的に上を行っている。あの逆鱗の姿には触れたらやけどしそうな熱さや、ぎりぎり爆発しそうな際どさがあった。

・監督の堤幸彦がいくらバンド活動をしていて音楽好きだからといっても、この映画で描かれているベックというバンドにはチリチリと火花が出るような熱さもヤバさも感じられなかった。やっぱりもう堤幸彦の歳ではそういう若さの滾りを映像で表すには適していなかったのではなかろうか? それともそういった火傷しそうな熱さや情熱を描き切れないからこういうお笑い的な作りにしたのか? いずれにせよ、バンドのメンバーの近づけない位、触れば火傷しそうな位の熱気や情熱が画面から出てこないのでは、この原作漫画とその話を描く意味はないのではないか?

・去年「kagerou」の第5回ポプラ社小説大賞受賞で話題になった水嶋ヒロ(齋藤智裕)はいいキャスティングだ。役者続けてたほうが良かったんじゃないのと思ってしまう。向井理

・歌唱シーンの口パクは・・・こういうのは負の効果しかない、失策の上の大失策演出でしょう。

・忽那 汐里(くつなしおり)はホントに可愛い、美形だ。これもまた20歳や28歳位になって大人の女になったときはどんな感じなんだろう? いやらしくも想像してしまう。相当イイオンナになるに違いない、が、思いっきりイメージが変わるかもしれない。さてどうなるか?ポッキーのCMはこの映画の美少女役とは随分かけ離れたイメージになっているし。今年公開された『マイ・バック・ページ』に出ていたときはやはり息を飲むような美少女だったのだが。この娘は下手にはしゃがせたり、お笑いをとるようなギャグをさせると一気にイメージダウンするかもしれない。静かで神秘的な美少女ってイメージを演出したほうがいいだろうな。

・忽那 汐里の可愛らしさを見たって事がこの映画を観た一番の収穫?