『間宮兄弟』 

●原作小説がロングセラーのヒット、その勢いをもらって映画もスマッシュヒット・・・・・だが、どうもこれも観る機会がなくて見逃していた話題の一作。

●このほのぼの感がいいのだろうか、この刺々しさのない全体の角が殆ど無い丸さがいいのだろうか?それが”癒し”なのだろうか? 恵比寿ガーデンシネマの歴代興行一位を獲得し(2007年10月現在では「アヒルと鴨のコインロッカー」に抜かれたが)どちらかといえば多くの女性客を引きつけた映画。

●恵比寿、六本木、渋谷、広尾なんかで働くさっそうとしたキャリアウーマン? いや仕事に悩みつつもそれを顔に出さずに元気な笑顔を作っている女性、同じく男性。そういった層にこの映画は一時の癒しを与えたのだろうか、そういう映画だからヒットしたのだろうか?

●だとしたら、やっぱり今の世の中は歪(ゆが)んでるし、歪(ひず)んでるということなのではないだろうか? この映画を観て、片時の心の癒しをうけて、そしてまた殺伐とした社会、会社に出ていかなくちゃならないなら。そういう人たちが溢れているからこそ、この映画がヒットしたというのなら、それはもうどうにもならない世の中だということだろうか?

●自分としてはこの映画は果たしてこれを映画にする要はあったのだろうかという感じである。二人の兄弟のごくごく平凡な暮らし。異常に美人な二人の女性を自分の部屋にカレーパーティーを催して招待する話。ん、その辺は想像以上に如実に描かれているから、あ、そうそう、自分もなんかにたようなこと思ったし、したし、感じたりしたな、と過去を思い出してドキっとし、ちょっとウゥっと恥ずかしくなってうめきたくなるような部分もあったけど。それが強烈な映画の何かではない。

●最後まで通してみても何か訴えるものも、心を叩くものも・・・無い。こういった二人の兄弟の日常がタラァっと流れていきそれを映画として追っかけたそれだけという感じである。「そこがいいのよ」「そのなんでもなさがいいのよ」「その普通さが温かくて癒されるのよ」なんて言う人が居たら(たぶんこの映画を好きという人はそういうことを言うのではないだろうか)「ふううん、そうですかぁ」と敢えて反論することもなく答えるしかない。

●映画としてこの作品はあまりにも何でもなさすぎる。その何でもなさがいいという人にはいいのだろうけれど、自分としてはこれが映画化され、こういうふうに特徴もなにもなくただプレーンなストーリーとして作られ、それが公開され、そしてスマッシュヒットするという流れに《?????》と思うしかない、そう思うだけである。