『花とアリス』

●蒼井優の出演作品を徐々に再見しているのだが、これは流石に岩井俊二作品だと思う凄さ。

●主役は鈴木杏だが、好みの男子を騙して騙しまくってなんとか自分の恋人にしてしまうという役のエグさがちょっときついなぁ。本人のなすところではないのだろうけど、この役は主役だけど、見ていて嫌いになる役だ。

●二人が公園のようなところを並んで歩く所を俯瞰してロングで追いかけるシーンがあるが、如何にも岩井俊二的であり、そのカメラワークは特殊で、直ぐにピンと凄いなと思わせる物がある。

●この映画、もちろん主役は鈴木杏で、プロモーションも映画のポスターも、ＤＶＤの表１も鈴木杏がメインだから蒼井が出ているということは最初しらなかった。ＤＶＤの表１なんて鈴木は顔が分かるが、蒼井はだれなんだか分からないような状態で写っている。蒼井の顔自体がそれほど目立つインパクトを持っている顔ではないが、並んで写っている写真を見ても鈴木にばかり目が言って、蒼井は共演してるどこかの普通の女学生？という感じである。

●この映画の大スポンサーであるキットカットのＣＭには当時鈴木杏が使われていたから、スポンサードされた映画としても鈴木をメインに推しだしてＰＲしなければいけなかったのだろう。それはこの映画のビジュアル全体にそういう指示が掛かっているようである。

●しかし、この映画の本当の主役は蒼井だったんだろうね。当時はまだ名がそれほど売れていなかったが、岩井俊二の目は蒼井に傾注している。お金を出してくれるスポンサーに配慮しなければ映画は作れないが、そのジレンマを巧く切り抜けて岩井俊二は鈴木を立てながらも蒼井の凄さを再度から映画を見た人に伝えるという離れ業的演出をやったのであろう。それは一言で言って・・・凄すぎる。

●蒼井優は最後の素晴らしすぎるダンスシーンでこの映画の全てを食ってしまった。このダンスシーンは邦画の名シーンとなるだろう。唖然とする美しさと凛とした清冽さが画面にあふれ出している。

それにしてもこのシーンだけで映画全部を自分のものにしてしまった蒼井はやはり凄い。そしてそれを見いだした岩井俊二はやはり恐ろしい。

●ロボットの社長が「ラブレター」を撮影したころの岩井をして「天才の狂喜」という時間だったと言っていた。その天才とビジネスは折りあわないとしてロボットは岩井と手を切ったと言っているが・・・・・確かに・・・・天才なのだろう。もっと花開くべきだろうが。

●やっぱり細部に渡って凄いと思わせるものがあり、暫くしたら再見してもう少し細かいところまで見てみたいと思わせる作品。

●だが、簡単には語れない作品

鈴木杏『花とアリス』独占インタビュー
http://www.cinematoday.jp/page/A0000604
ネスレ、鈴木杏と蒼井優主演のショートフィルム「花とアリス」第2章
http://bb.watch.impress.co.jp/cda/news/2194.html

★映画批評by Lacroix