『亀は意外と速く泳ぐ』(2005)

上野樹里は撮影当時17歳か、人妻役という設定は無理。普通のOLでよかっただろうに。

蒼井優は役が合っていない。今となっては蒼井の方が主役級かな?

●脱力系、ゆるゆる系、癒し系なんて言われる映画は好きではないが、それは観る側に癒しを与えようだとか、安らぎを与えようなんてあざとらしさが感じられる作り方が鼻につくからだ。癒しだ、安らぎだなんてもんをそう簡単に誰かに与えられるものか、そんなものが故意に作れるものかという思いがあるし、狙って作られた癒しや安らぎの演出なんかに本当の癒しや安らぎなんてあるはずない。

●だが、この作品の場合は、完全にコメディーでありギャグであり、それがゆるゆるして脱力していてほわっとしている。監督は癒しだ、安らぎだなんてものを作ろうだ、与えようだなんて気持ちは全くない。そんなせせこましい余計な、大きなおせっかいなどしようとしていない。だらりとしたほにゃほにゃしたゆるゆるの面白さを作っているだけ。だからこの映画はイイ。ゆるゆるや脱力が純粋なのだな、だから非常に好感が持てる。ゆるゆるだ、癒しだなんてものは意図して作るようなものじゃない、空気のように気が付かず漂ってくるものなのだろう。

岩松了ふせえりの二人はキャラクターがはっきりしていて実にいい味を出している。『転々』にも出ていたということだが、あ、そういえばそうかと思い出す程度の端役だったし目立つようなキャラではなかった。だがこの映画では強烈に話を引っ張っている不可解な二人が実に面白い。そこに付けくわえて松重 豊のひょうひょうとしたラーメン屋のオヤジがまたイイ。

●意味不明、正体不明のスパイ組織なんてのもまた実に面白い。

●当時はまだそれほどの人気でもなかっただろうが、上野樹里を主役に据えて撮影されたこの映画。上野樹里よりも、周りを囲む癖と味のあるベテラン役者のコミカルな演技によってこの映画の面白さは醸し出されていると言えるだろう。その点で言うと本当の主役は岩松、ふせ、松重の三人と言えるかもしれない。

亀は意外と速く泳ぐ』HP:http://www.wilco-jp.com/kamehaya/