『バブルへGO!!タイムマシンはドラム式』 

●山手線の駅にあるベンチに宣伝看板が出ていたが、その看板見るとどうにもこうにも「これは当らないでしょう」という雰囲気プンプン。しかも凋落甚だしい広末涼子が主役とあってはなんで今更という気がしていた。
●バブル時代にタイムトラベルして云々という話しも聞いただけで「これはダメだろうなぁ」という予感は高くなった。
●最初から「広末も老けたな」というのがシミジミと感じられる。あれだけ売れ線アイドルだったのに、結婚して子供も出来てとあってはしょうがないが、もともとオタク系のアイドルでもあったから歳を取って女らしさが増してイイ女になるという感じでもない。松嶋菜々子なら結婚して子供が出来てもどんどんイイ女になっていってるが、思いっきりの広末アップだと顔のシワまでがまじまじと見えてしまってちょっと引いてしまう位だ。(もう少し奇麗に撮れるだろうと言いたくなる)そして相変わらずの、どこで何をしてどんな役柄でどんな設定の映画に出ても全く同じ広末のワンパターンの演技。これはやっぱり見るべきじゃなかったなんて始まって10分位で思う有り様。

●ストーリーは単純。タイムマシンものは割りと時間系列がこんがらがって複雑な話しになりがちだけど、至って単純な話し。

●2007年の現在日本の経済はボロボロで借金がウン兆円!このまま行ったら日本は崩壊する!・・・・・ほんとそうかも。
というシリアスでクリティカルな話題が事の発端で、それを食い止める為にバブル時代へタイムトラベルするという話しはよく考えたなと思う。実際に今の日本はどうしょうもない状態だし、格差社会だ、未来がないだとちょくちょく言われている。そんな政治的、社会的に非常に重い話題をストーリーに取り入れるとはお気楽ホイチョイムービーにしては異質。しかもタイムマシンを使って今のこの閉塞した2007年をそしてこの日本を変える? 果たしてどういうふうに変えるのだろうと期待していた。ラストでホイチョイがどんな結末を出すのだろうかと?

●しかし、バブル期の失策を食い止めて現代に戻ってきたら、ただ単にキーマンの阿部寛は首相になり、家族も一つになって幸せに落ち着きましたというだけ。
将来の不安、日本の負債、この国の崩壊なんてことをストーリーのベースに設定しておきながら、なんらそこに答えも解決も夢も希望も絶望すらも示さず、ただ単にドタバタ劇として話しを全部を終わらせている。これはないなって感じ。

ホイチョイだからエンターティメント映画でいいし、楽しめればそれでいい。ホイチョイが社会性のある映画なんかやっても様にならないし、そんな映画作れるはずが無い(ホイチョイに会社やプロダクションとしての実体があるわけではないが)・・・・そういうホイチョイのイメージと映画が取り扱っているモチーフが合っていない。

●2007年の今と今後の日本の不安や危機感だけを話しのモチーフとして使っても、最初から最後までそんな社会性をどうこう論じるつもりなんて無くていつも通りのドタバタをやっている。

●少なくとも今社会人になりある程度の社会生活を送っている人ならば、この映画がネタとして使っている日本の負債や将来の日本自体の崩壊の危険性なんてのは肌身に感じているはずだ。最初にそんな大きく重い時代背景を観客に示しておきながら、なんらそんなことはお構いなしで、ラストに至ってもそんなことはただの設定で使っただけで特に深くは考えていませんというような脚本であり映画の作り方。

そういうところが不快!

●エンターティメントならエンターティメントとして振り切るべきであり、そこに現代の大問題を偉そうに持ち出して話しに組み込んでしまったら、本来の楽しむべきはずのエンターティメント性が損なわれる。お気楽お馬鹿なエンターティメント映画に暗い陰、不安な将来なんて背景を、時代状況設定を組み込んでどうする?。愚かである。真面目に語るべき話しをエンターティメントに持込んだ時点で、エンターテイメントとしてダメダメであり、またその真面目な問題に対する社会的な姿勢として更にダメダメなのだ。

●80年台中期から90年初期に訪れた異常なバブルという時代を経験していない人には、この映画で見せつけられるあの頃の異常さは滑稽にしか映らないだろう。幾らでも金をばらまき、どんなにお金を使っても大丈夫と踊らされ思わされていた時代。あのころの女性の衣装やら髪形、ジュリアナファッション、大きな携帯電話。そう言ったものがこれ見よがしにバブル時代を示す遺物として繰り返し映画の中で出てくるが、見る度にどうも引いてしまう。今の20代とかであのバブルを全く知らない若い人が見たら「バカみたい」としか思えないんじゃないか? とにかくあの頃の描写がくどすぎて見ていて嫌味、エグ味がある。

●老けたなぁと思った広末だが、船上パーティーでブレイクダンスするシーンはなかなかエロかった。ああいう演技をする広末というのを今まで観たことがない。しかし芸者姿で顔を白粉で真っ白くした広末はお世辞にも可愛いとも綺麗な和美人とは言えず、着物を着ていても日本女性的な美しさは微塵もない。顔も目を背けたくなる位の不細工さであった・・・・。

●薬師丸博子が若い頃と老けたときの二役をしていたが、髪形と化粧の巧さか、若い頃はそれなりに若く、おばさんになったときはそれなりに老けた感じが出ていて歳の違いが上手く表現されていた。

●一番奇麗だなと思ったのは伊藤裕子か? バブルの頃の前髪跳ね上げスタイルはみっともないがそれがバブル期の流行りでありスタンダードだったんだろう。でも伊藤裕子は元々美人だからバブル、現代、どちらの格好をしていてもイイ女だ。しかし伊藤裕子は作品や役に恵まれていない。これくらい美人だったらもっとイイ役が取れてもっと有名になれそうなものだけど、なんでかな?ツキがないのか?

吹石一恵は顔そのものが古風な感じだから、バブル期はすんなり嵌まった顔だったが、現代にもどったら逆に違和感を感じた。不思議なもんだ。

劇団ひとり........一番ちゃんと演技してたかな? 広末を食うサブキャラだった。
阿部寛...........この人もいつも変わらない、そこがいいのか。
・劇中に出ていた飯島愛飯島直子、猿岩石の片われ、その他諸々は・・・・どうでもよし。

●約二時間の時間潰しは出来たかなという程度の映画。タダでもう一回見る?と言われても断るだろう。もう一回見る気は全くしない。DVDを買うか?と聞かれても買いません!と言う。そういう映画である。