『女囚701号 さそり』 

クエンティン・タランティーノが「キル・ビル」でそのオマージュとして「修羅雪姫」と梶芽衣子をこれでもかというくらい持ち上げていたが、自分としては流石に「修羅雪姫」「女囚さそり」などは知らなかった。1970年代初頭のこれらの作品にまで目を通しているタランティーノは本当に凄い日本映画オタクであろう。

●その梶芽衣子主演で傑作と呼ばれているのが「女囚サソリ」シリーズ。そしてこれがその第1作目か。

●作風としては女性が主役であるが、モロに東映のヤクザ、仁侠路線そのものである。このころの東映ってヤクザ映画でバカバカ収入が入ってきていたから会社が作る映画全部がこんな感じになっていたのかもしれない。また同じく日活ではポルノが全盛であったから、この映画にもポルノ映画のテイストはたっぷり入っている。

●当っている映画の当っているところ取りをしたような映画でもある。だが、それ以上に梶芽衣子の演技の強烈さは目立っている。

●今とは違ってCGIもなく、新しい映像表現をこの監督が色々と模索していたのが分かるような作品でもある。

●映画の中に狂言や歌舞伎の舞台回し、メイク、などを大胆に取り入れている部分がある。ちょっと見ではいきなりそういう特殊が表現が映画のなかにでてくると余りに極端であざとらしく、びっくりしてしまうのだが、監督の苦労とかなにか映画のなかに今までになかった表現手段を取り入れようと模索していたその苦しみや頑張りがひしひしと伝わってくる。それが完全には映画になじめず、実験のような段階で映画のなかに取り込まれているから、今見る側としては違和感を覚えざるをえない。だが、なるほど、こんな風にしてこの監督は苦労していたんだなと、映画の過渡期の勉強には非常に良いと思う。

●殺し、だまし、恨み、強姦、セックス、女の刑務所、レズ、いやはやモチーフはてんこ盛り状態である。

●数年前に朝日新聞日経新聞の文化欄でこの映画を取上げていたことがあった。その時のコピーが今はみあたらないのだが、やはり舞台回しや、歌舞伎から借用したメイクによる怒りの表現などは特殊なものとして、説明をしていたようであった。

●その他にも面白い部分としては、ヤクザの一味に集団強姦されるシーンではわざわざ透明なガラス晩の上で演出を行い、ヤクザに強姦される梶芽衣子を透明な板の下から撮影するという面白いこともしている。

●またさそりから情報を聞きだそうと同じ監獄に送り込まれた女性のスパイが、その素性をさそりに見破られ、美貌のさそりから誘惑され官能を味わう。情報を聞きだすことが出来ないスパイの女性をもう役に立たないと外そうとするとその女性は「もう一度やらせてくれ」と看守に懇願する、怪しく思った看守がスパイの服をはぎ取ると、体には愛撫を受けた接吻の後が・・・・そして引きだされたさそりは無口のままキラリと目を光らせる。コの辺りの演出は当時のものであるが、なかなか鋭く際立っている。特に梶芽衣子の女性的カッコ良さは相当のものである。

●監獄で全ての女性囚人を裸にして水を浴びせ、それをいやらしく笑ながら見る看守など、いかにもポルノ映画的なテイストは今となってはセンスを感じないが、全体的に非常に面白い構成で映画をまとめており、30年以上前の作品でありながら、映画の勉強ということでは見ておくべき一作であろう。